日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビッカリー」の意味・わかりやすい解説
ビッカリー
びっかりー
William Vickrey
(1914―1996)
カナダの公共経済学者。ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリアに生まれる。アメリカのエール大学、コロンビア大学に学び、アメリカ財務省などに勤務。その後、経済効率性と公平性を両立させる所得税制の理論を論文「Agenda for Progressive Taxation」にまとめ、1947年にコロンビア大学から博士号を受ける。同理論は所得税の基本モデルとなった。ほぼ一貫してコロンビア大学教授を務め、1996年にJ・A・マーリーズとともにノーベル経済学賞を受賞した。受賞理由は「情報の非対称性のもとで、情報がどのように経済的な誘引(incentives)をもたせるかという理論の基礎を築い」たことである。
経済理論を現実の問題の解決に役だてる具体的方法にとくに関心を寄せ、1960年代初頭に情報が不完全な状態で、相手の出方を読む競売(auctions)の理論を唱え、現在でも政府による国債入札や周波数帯の免許交付などに活用されているほか、競売メカニズムを応用してニューヨークの地下鉄の料金制度をデザインした実績がある。所得税を累積所得に課税する提案や最適所得税の理論の提唱者でもある。
第二次世界大戦後シャウプ税制使節団の主要メンバーとして来日し、日本の戦後税制の基礎を築いたことでも知られる。
[金子邦彦]