一般には「きょうばい」ともいう。売り主が多数人に対し目的物についての買受けの申し出をさせ、最高価額の申し出人に対して承諾を与えて売買すること。競売には、私人が行う私競売と、国家機関が行う公競売とがある。民事執行法上の競売、国税徴収法による競売が後者の例である。
民事執行法上の競売には、債務名義に基づく強制執行手続における競売(強制競売)と、担保権の実行としての競売および換価のためのみのいわゆる形式的競売(共有物分割、限定承認の競売等)とがある。前者の強制競売はかつては民事訴訟法第6編に規定され、後者の担保権の実行としての競売(任意競売)および換価のためのみの競売は競売法に規定されていたが、規定の不備(とりわけ競売法の規定は不十分)が甚だしかったため、これら二つを統合し、理論と実務の両面から、強制執行、競売制度の合理化、近代化を図り、その機能を充実させることを目的として、1979年(昭和54)に制定されたのが民事執行法である。したがって同法には、一方で強制競売としての不動産の競売(45条以下)および船舶の競売(121条で不動産競売の規定が準用)の規定があり(動産は入札またはせり売りのほか最高裁規則で定める方法)、他方で、担保権の実行としての競売(181条以下)および換価のための競売(195条で担保権の実行としての競売の例による)の規定がある。
国税徴収法による競売(公売)は、滞納者の差押え財産を換価する手続で、国税徴収法がその方法を定めている。
ところで、とくに不動産競売については1990年代後半からその数が増え始めた。住宅ローンが払えなくなった、自宅を担保にした事業が失敗したなど90年代の不況によるものとみられている。また、最低売却価格が市価の2~3割は安いとあって、不動産業者だけでなくいわゆる素人(しろうと)が入札参加者に加わり間口が広がる傾向にある。裁判所によっては物件情報をファックスで24時間検索できる情報提供システムを採用している。問題点としては、買う前に部屋に入って調べることができない、ローンは使いにくい、などがある。また、暴力団がからむ例もある。第三者が占有していればさらに安くなることもあるため、ここに目を付けて占有役と落札役に分かれて安く買いたたくという例もある。
[淡路剛久]
『住宅金融公庫債権保全研究会著『不動産競売申立ての実際』(1997・自由国民社)』▽『上野隆司著『不動産競売実務の手引き』(1999・金融財政研究会)』
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〈けいばい〉とも読む。広義では,多数の買い手を集めて,動産や不動産について口頭で買受けの申出をさせ,最高価額を申し出た者との間に売買を成立させることをいう。〈せり売り〉と同義。裁判所によって行われ,強制競売と不動産競売,動産競売などがある。狭義では金銭債権の執行ないし租税の滞納処分の方法として認められる法制度上の手段をさす。これは税務官庁が行うもので,租税滞納処分の一段階として行われる公売がこれにあたる。不動産に対する競売の価格は,市場価格より低くなりがちなため,不動産に対する事件屋等の暗躍する余地が生じ,法は,そうした者の売却場からの排除処置などを規定して,公正な競売の実施を期しているが,なおその厳格な実行が望まれる。競売の結果,代金納入後,買受申出人が,競売に付された財産の所有権を取得することを競落といい,競売手続の最終段階にあたる。
競売は,差押-換価(せり売りの段階)-配当までの一連の手続全体を意味する場合と,せり売りの換価部分のみをさす場合とがある。
執筆者:清田 明夫
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