シャウプ勧告(読み)しゃうぷかんこく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャウプ勧告」の意味・わかりやすい解説

シャウプ勧告
しゃうぷかんこく

アメリカの財政学者カール・シャウプCarl Summer Shoup(1902―2000)を団長とする使節団によって、1949年(昭和24)8月(第一次)と50年9月(第二次)に、連合国最高司令官マッカーサーに提出された日本の税制改革に関する報告書をいう。当時、戦後インフレーションを収束するため経済安定九原則とドッジラインが敷かれていたが、同勧告は、これを税制面から補完して経済安定を達成することを目的とすると同時に、将来にわたって細かい点を除いて修正の必要のない、正常的・恒久的税制の確立を意図していた。

 同勧告の内容は、国税、地方税、税務行政の全般にわたっていた。まず国税については、直接税中心主義をとり、所得税は徹底した総合課税とし、その最高税率を引き下げるかわりに富裕税を設けること、法人税は、配当分について所得税の前払いとして課税すると同時に、個人が配当所得を取得したとき配当控除を認めること、そしてインフレによる減価償却不足を解消するため資産再評価を行い、評価益に再評価税を課すること、などを内容としていた。地方税については、地方に独立税目税金の種類)を配分して、付加税方式(国税収入の一定パーセントを地方税とするやり方)をやめること、地方税収入が地方財政需要額に不足する分については、財政平衡交付金制度をつくって国が全額補填(ほてん)することを求めていた。そして税務行政については、税負担の不公平さを一掃するために、青色申告制度、予定申告制度などの採用を勧告していた。

 同勧告は、若干の点を除いて、ほとんど1950年度税制に採用され、その後、多くの改定が行われて勧告の基本路線が希薄になったとはいえ、現在に至るわが国税制の基礎となっている。

[一杉哲也]

『林栄夫著『戦後日本の租税構造』(1958・有斐閣)』『二見明著『戦後租税史年表』(1983・財経詳報社)』『吉岡健次著『シャウプ勧告の研究』(1984・時潮社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シャウプ勧告」の意味・わかりやすい解説

シャウプ勧告
シャウプかんこく
Report on Japanese taxation by the Shoup Mission

1949年コロンビア大学教授 C.シャウプを団長とする使節団が,日本の租税制度に関して行なった勧告。同使節団は同年5月 10日来日,調査ののち,同8月 26日シャウプが内外記者団と会見,その概要を発表。同9月 15日 GHQ全文を発表した。それは税制の根本的改革を指摘し,青色申告制度の創設などの所得税を中心とした税務行政の整備,富裕税,資産再評価法の新設,独立税を中心とする地方税体系の確立,地方財政平衡交付金制度の採用などを内容とし,一貫した租税体系として提案された。 50年以後実施された税制の改革はその一部分を導入したにすぎなかったが,法人優遇,資本蓄積の促進という勧告の基本的性格は引継がれ,ドッジ・ラインで与えられた戦後日本経済の租税体系の基礎となった。

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