改訂新版 世界大百科事典 「ビヨー」の意味・わかりやすい解説
ビヨー
Théophile de Viau
生没年:1590-1626
フランスの詩人。フランス南西部のクレラックに新教徒の小貴族の子として生まれ,ボルドー,ソミュール,ライデンの大学に学んだ。旅芝居の脚本書きなどをして放浪生活を送ったのち,何人かの大貴族の保護を得て,1619年ころからパリでしだいに名声を高めた。すぐれた詩人として,また自由思想家のリーダーとして大きな影響力を振るったが,23年イエズス会を中心とする宗教勢力の策謀によって投獄され,長い裁判の末,25年にようやく釈放されたものの,衰弱のため翌年パリで死去した。フランス詩が急速に自然を忘れ,サロン的な恋愛遊戯の道具になっていく時代にあって,みずみずしい感受性で自然を歌うとともに恋愛感情を真摯・直截に表現し,あるいはまた独特のすぐれた思想詩を書いて,理性も意志も無力で星辰(宿命)にもてあそばれる人間存在の悲劇性を歌い上げた。その詩は17世紀を通じて長く愛唱された。《作品集》3巻(1621-26)があり,その中には詩のほかに当時の知識人の内面をうかがわせる自伝的散文作品《第一日》(別名《こっけい物語断章》)や古典主義的な悲劇《ピュラモスとティスベ》(ともに1623)が収められている。
執筆者:赤木 昭三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報