日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビロードの爪」の意味・わかりやすい解説
ビロードの爪
びろーどのつめ
The Case of Velvet Claws
アメリカの推理作家E・S・ガードナーの長編。弁護士探偵ペリー・メースンの第1回登場作品。1933年刊。メースンの弁護士事務所に、明らかに偽名を名のる美しい依頼人が現れる。人妻と密会しているところをホールド・アップ事件に巻き込まれた次期立候補をねらう政治家。その人妻の正体を知ろうとするスキャンダル新聞。その新聞社の黒幕である大物が殺され、メースンは女秘書デラ・ストリート、私立探偵ポール・ドレークの協力を得て事件解決に乗り出す。状況も語り口もハードボイルドではあるが、法律知識に富むメースンは非合法すれすれの線で巧みに事を処理して解決に至るという、新しい推理作品の開拓に成功している。
[梶 龍雄]
『小西宏訳『ビロードの爪』(創元推理文庫)』