日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピサネッロ」の意味・わかりやすい解説
ピサネッロ
ぴさねっろ
Pisanello
(1395ころ―1455)
イタリアの画家、メダル作家。ピサ人を父としてピサあるいはベローナで生まれたが、幼くして母の故郷ベローナに行き、そこで画業を修める。本名をアントーニオ・ディ・プッチョというが、ピサ出身の子という意味のピサネッロが通称となる。イタリアにおける「国際ゴシック様式」の代表的画家。1427年にジェンティーレ・ダ・ファブリアーノが世を去ったのちは、イタリア随一の宮廷画家として各地で活躍する。その名声は多くの詩人や文人の賛辞によって今日に伝えられている。彼はベネチア、ベローナ、マントバ、ローマ、ナポリなどで重要な仕事を任され、多くの壁画や祭壇画、あるいは肖像画を制作した。しかし、現存する作品は少ない。
そのうちもっとも重要なのは、ベローナのサンタ・ナスタジア聖堂の壁画、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの『聖アントニウスと聖ゲオルギウスを伴う聖母子』などである。このほか多くのすばらしい素描を残し、また優れたメダルを制作している。こうした活動を総合的に考えるならば、彼は15世紀イタリアのもっとも重要な美術家の1人ということができるであろう。
[石鍋真澄]