改訂新版 世界大百科事典 「ピュセル」の意味・わかりやすい解説
ピュセル
Jean Pucelle
生没年:?-1334ころ
フランスの写本挿絵画家。1320年ころよりパリで活動。《ロベール・ド・ビランの聖書》(署名,1327年の年記あり),《ベルビルの聖務日課書》(1323-26ころ。名前の書込みあり)の挿絵・装飾を行った工房の親方である。また《ジャンヌ・デブルーの時禱書》(1325-28ころ)は史料と様式比較から,彼自身の手になる代表作とみなされている。構想力にとみ,前例のない複雑な図像を,写本ページ全体に挿絵,文字装飾,縁飾を一体化した独特なレイアウトで実現,14~15世紀にわたるゴシック写本装飾の伝統を確立した。北方の13世紀後半以来の優雅なゴシック的マニエリスムに,イタリアにおけるジョット以来の立体感,遠近感の表現技法を導入した最初の人物として重要である。
執筆者:冨永 良子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報