改訂新版 世界大百科事典 「ファイブズ」の意味・わかりやすい解説
ファイブズ
fives
壁にぶつけてはね返ったボールを2組の競技者が交互にパッド入りの皮手袋をはめた左右の手で打ち返すスポーツ。ペロタ,ウォールハンドボールなどと類似する。ファイブズの名は5本の指,すなわち手のこと,あるいは競技者がかつては5人組だったことに由来するというが,正確には不明。建物の壁にボールをぶつけて遊ぶ単純なゲームとして,きわめて古くからイギリスで行われていたものであるが,19世紀にイートン校,ラグビー校,ウィンチェスター校などパブリックスクールを中心に普及し,20世紀になってルールが整備された。イートン・ファイブズは,幅14フィート(4.3m)で長さは251/4フィート(7.7m)のコートを使用するが,前方の10フィート(3m)は一段高くなっている。また,左壁に柱の出っ張りがある。これは発祥地イートン校の礼拝堂外壁を模したものである。2組4人で競技し,各組が上段と下段のコートに1人ずつ入り,コルクとゴムでできたゴルフボールほどの白球を前面と左右の壁を利用して打ち合う。サービス側のみが得点し,12点で1ゲームとなる。ラグビー・ファイブズはコートが28フィート(8.5m)×18フィート(5.5m)で,後面の高さ6フィート(1.8m)の壁を含め4面の壁を利用する。競技者は2人または4人で1ゲーム15点。ウィンチェスター・ファイブズは4人制4壁面である。いずれも特殊なコート(規格は厳密ではない)を必要とするため,イギリスの高校,大学以外ではあまり行われていないが,機敏性と激しい動きを楽しむスポーツである。
執筆者:薗田 碩哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報