…聴き手は,いわば声楽曲で音と歌詞を総合して受容するように,題の示す内容と音楽とを総合して受容するのである。また,例えばリストの《ファウスト交響曲》のように,文学作品と結びついた標題音楽は文学の内容を音楽化しているのではなく,その文学作品がその題材によって表現することを目ざしたが表現し尽くすことのできなかった,単に文学的な内容を超えたより深いものを音を使って表現しようとする試みであり,ゲーテの創作の継続なのであるという考えである。
[歴史]
19世紀の標題音楽の先駆としては,14世紀の鳥の声を描写した音画的要素を含んだ声楽曲〈カッチャcaccia〉(〈狩り〉の意)や15世紀の声楽曲〈バッタリアbattaglia〉(〈戦い〉の意)での戦争の場面の描写があげられる。…
…神秘的・象徴的な台本に加えて複雑な和声を多用,対位法的で非ロマン的な論理性に貫かれた音楽である。(f)ゲーテの詩劇の登場人物の性格描写を各楽章で行ったリスト作曲の《ファウスト交響曲》(1857),そのほかゲーテの《ファウスト》の中の歌詩を選んで,ベートーベン,シューベルト,メンデルスゾーン,ムソルグスキーらが作曲している。リストには,N.レーナウの詩による管弦楽曲《レーナウの“ファウスト”からの二つのエピソード》(1860以前)もある。…
…彼のもとにはビューロー,P.コルネリウス,C.タウジヒらが集まった。ピアノ曲集《巡礼の年》第1年(1854),第2年(1849),《超絶技巧練習曲》(1851)および《ピアノ・ソナタ》(1853),管弦楽曲では交響詩《前奏曲》(1848),《タッソー》(1849),ピアノと管弦楽のための《死の舞踏》(1849),《ダンテ交響曲》(1856),《ファウスト交響曲》(1857)のほか2曲のピアノ協奏曲(《第1番》1849,《第2番》1861)など主要作品が多い。作曲技法として主題とその変容による単主題的作法を確立,シェーンベルクの〈発展的変奏〉技法の先駆をなした(《ソナタ》《前奏曲》など)。…
※「ファウスト交響曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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