日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェズ条約」の意味・わかりやすい解説
フェズ条約
ふぇずじょうやく
Treaty of Fez
1912年3月モロッコのフェズで調印された、モロッコをフランスの保護領とする条約。モロッコはアラウィー朝(1631~ )のスルタンのもとでヨーロッパとオスマン帝国の二大勢力から自立していたが、19世紀に入ってフランス、イギリス、スペインなどの列強がしだいに圧力を強めていった。1883年のマドリード条約、1906年のアルヘシラス会議を経てフランスはモロッコへの介入を強化し、フェズ条約および12年11月のフランス・スペイン条約によって植民地化を果たした。
すなわち、モロッコはスペイン地区、フランス地区、タンジールの三地区に分割され、スルタンの名目的主権は維持されたものの、スペイン地区ではスペイン政府が派遣した高等弁務官、フランス地区ではフランス政府が任命する統監が軍事と外交だけでなく、内政についても実権を掌握した。なお、タンジール地区については1923年の取り決めで国際管理地区となった。
[宮治一雄]