高等弁務官という称号は、国際関係において種々の場合に任命される高官について用いられる。まず、外国領土で一国が行使する政治的権限を付与された当該国の代表者(たとえば、イギリス占領下のエジプト駐在高等弁務官や、返還以前の沖縄におけるアメリカの高等弁務官)を、また、他国と共同統治を行う領土における一国の代表者(たとえば、かつてニュー・へブリデス諸島の英仏共同統治においてそれぞれが任命していた高等弁務官)をさすことがある。つぎに、一定の施政権または行政権を付与された国際機関(ないし1または2以上の国)の代表者(たとえば、国際連盟のダンツィヒ自由市高等弁務官)や、最近ではとくに、人道援助や人権の国際的保障のための活動をする国際機関(たとえば、国連難民高等弁務官、国連人権高等弁務官、OSCE〔欧州安全保障協力機構〕少数民族高等弁務官)をさすことがある。なお、1991~2000年にかけて緒方貞子(おがたさだこ)が国連難民高等弁務官を務めた。さらにまた以上とは別に、2国間の政治関係が通常の外交関係の存在を困難にする際に一政府が他政府に派遣する代表者(かつてのフランスとベトナム)について用いられることもある。
[皆川 洸・川﨑恭治]
(1)外交使節の一種 イギリス連邦諸国相互の間で交換される常駐使節は,高等弁務官と呼ばれるが,席次や特権免除などについては,一般の大使と同等の待遇を受ける。(2)国際機関の一種 1951年,国連総会のもとに,難民高等弁務官(UNHCR)が設置された。国連難民高等弁務官事務所の本部はジュネーブにあるが,日本にも支部が置かれており,現在は主としてインドシナ難民の救済にあたっている。また1993年には,国連人権高等弁務官(UNHCHR)が設置された。(3)植民地における統治責任者 海外の植民地の統治にあたる最高責任者は総督と呼ばれることが多いが,マレー(イギリス領)やインドシナ(フランス領)では高等弁務官と呼ばれていた。(4)占領地における最高施政官 第2次世界大戦後,ドイツおよび日本(沖縄)における連合国の支配が,軍政から民政に移るにともない,それまでの軍司令官に代わる施政の最高責任者として,新たに高等弁務官が任命された。
執筆者:波多野 里望
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