フクラヤムシ(読み)ふくらやむし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクラヤムシ」の意味・わかりやすい解説

フクラヤムシ
ふくらやむし
[学] Sagitta enflata

毛顎(もうがく)動物門矢虫綱無膜目ヤムシ科に属する海産動物。体長3センチメートル以下で、体はふっくらとして軟弱、体色は透明。星状眼色素をもつ。暖海域の表層に普遍的に生息するプランクトンで、黒潮流域に多く、黒潮の指標種である。相模(さがみ)湾、駿河(するが)湾には1年中出現するが、とくに夏から秋に多い。両湾の表層においてエンガンヤムシヒメヤムシとともに、個体数が多い。貪食(どんしょく)な種で、浮遊性橈脚(とうきゃく)類など複数の餌(えさ)を腸管内にもっている個体が多い。

[永澤祥子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フクラヤムシ」の意味・わかりやすい解説

フクラヤムシ
Sagitta enflata

毛顎動物門矢虫綱無膜目ヤムシ科。体長 3cm以下。体は透明で軟らかく,頸部と尾部横隔膜部のくびれがはっきりしている。泡状組織 (体の表皮が肥厚したもの) はない。前鰭は体の中央部より後方にあり,後鰭は三角形状で前鰭よりやや長い。各大洋の温暖な水域にごく普通にみられ,海流により内湾にまで入り込んで多産する。

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世界大百科事典(旧版)内のフクラヤムシの言及

【毛顎動物】より

…世界で約110種,うち日本からは33種が知られている。キタヤムシ(イラスト),フクラヤムシ,ヤムシ,マントヤムシ,フトエリヤムシ,ヘラガタヤムシ(イラスト)などが日本近海に広く分布する。【今島 実】。…

【ヤムシ(矢虫)】より

… 出現する量が多いので,魚類の重要な餌になっており,またきまった水温や塩分濃度に生息する種類は海流の調査などで水塊の指標種にされている。 ヤムシSagitta bipunctata,フクラヤムシS.enflataは各大洋の温暖な水域にもっともふつうで,表層に多産する。キタヤムシS.elegans(イラスト)は北海道やオホーツク海に広く分布し,親潮の指標種になっている。…

※「フクラヤムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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