改訂新版 世界大百科事典 「フサスグリ」の意味・わかりやすい解説
フサスグリ
currant
おもに北ヨーロッパで栽培されるユキノシタ科の落葉性小果樹。径5~8mmの小果が房状に下垂するスグリ類で,カラントともいい,果実の色でアカフサスグリ(レッドカラントredcurrant)とクロフサスグリ(ブラックカラントblackcurrant)とに大別される。アカフサスグリは中央・北ヨーロッパから北アジアにまで広く分布するRibes rubrum L.,ヨーロッパの高山やアフリカ,シベリアに分布するR.petraeum Wulf.,それに東ヨーロッパのR.sativum Symeおよびそれらの交雑された品種群であり,クロフサスグリはヨーロッパからアジアにかけて広く分布するR.nigrum L.から選抜されたものである。いずれもヨーロッパで栽培化された。フサスグリ類は枝にとげがなく,冷涼な半日陰地の肥沃粘重土を好み,挿木,株分けで楽にふやすことができる。クロフサスグリは,異臭があるがビタミンCに富み,昔から医薬的価値が高くて生産が多く,ジュースにしてもこくがある。そのほかゼリー,料理用に愛用されるが,アメリカではマツの病菌宿主のため栽培が規制されている。日本では多湿気候のため栽培はアカフサスグリの方が適し,赤実がルビーのように美しくて盆栽にも向く。なお芳香性の黄花種flowering currantや斑(ふ)入り観賞種(葉),匍匐矮性(ほふくわいせい)種(いずれも異なる亜種)もある。シロフサスグリはアカフサスグリの色変りで,イギリスでは長果房種などもできている。
執筆者:松井 仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報