日本大百科全書(ニッポニカ) 「スグリ」の意味・わかりやすい解説
スグリ
すぐり / 須具利
[学] Ribes
ユキノシタ科(APG分類:スグリ科)スグリ属の総称。落葉低木で、スグリ区とフサスグリ区の2区に分けられる。
(1)スグリ区 グーズベリーgooseberryと総称され、数種がある。花は単生するか、葉腋(ようえき)に束状につき、多くは枝に刺(とげ)がある。長野、山梨、群馬の3県にまれにみられる野生種R. sinanense F.Maek.(R. formosanum Hayata var. sinanense Kitam.)は高さ2メートル、無毛の枝が多数あり、葉腋に3裂した刺がある。花は白ないし淡赤色で、5月ころ葉腋に1個ずつつける。果実は球形ないし楕円(だえん)形で、直径約1センチメートル、熟果は赤く、食べられる。セイヨウスグリ(ヨーロッパスグリ、イングリッシュグーズベリーともいう)R. uva-crispa L.(R. grossularia L.)はヨーロッパ原産。果実は球形ないし楕円形で、直径1~1.5センチメートル、高さ1~2センチメートル、熟果は赤、黄、緑白色などである。枝は短くて太く、鋭い刺がある。この系統のドイツ大玉は重さ約8グラムで、緑白色に熟し、よく生食用とされる。また赤実大玉は熟すと暗赤色となる。アメリカスグリR. hirtellum Michx.はアメリカ原産。果実は多くは球形で、小さい。ヨーロッパ系のスグリと本種との雑種のなかから、よい栽培品種ができている。ホートンHoughtonはそのなかの一つで、うどんこ病に対して抵抗性があり、豊産で、果実は3グラムにもなる。7~8月、暗赤色に熟す。
(2)フサスグリ区 カランツcurrantsと総称される。4~5月に房状に花をつけ、7~8月に熟す。成熟果が赤色の品種群をレッド・カランツ(アカスグリ)red currants/R. sativum Symeといい栽培種の基本種で、ヨーロッパ北西部原産。白色果と桃色果の系統はこの変種である。黒色果の品種群をブラック・カランツ(クロスグリ、カシス、クロミノフサスグリ)black currants/R. nigrum L.とよび、ヨーロッパと中央アジア原産。日本への渡来は明治初期で、北海道、東北地方など夏期に冷涼な地域での栽培に適する。暖地では半日陰地で栽培する。繁殖は挿木、取木などによる。生食のほか、ジュース、ジャム、ゼリーなどに用いる。
[飯塚宗夫 2020年5月19日]