日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ化ケイ素酸」の意味・わかりやすい解説
フッ化ケイ素酸
ふっかけいそさん
fluorosilicic acid
ケイ素のフルオロ酸。正しくはヘキサフルオロケイ酸という。フッ化ケイ素酸、ケイフッ酸、ケイフッ化水素酸、フルオケイ酸などは俗称。化学式H2SiF6、式量144.1。四フッ化ケイ素を水と反応させると、コロイド状のケイ酸とともに生じる。あるいはフッ化水素酸に二酸化ケイ素を溶かして得られる。
3SiF4+3H2O→2H2SiF6+H2SiO3
これにフッ化水素酸を加えてケイ酸を溶かすと多量に得られる。純粋なものは、ヘキサフルオロケイ酸バリウムBaSiF6と硫酸との熱分解で得られる。濃水溶液を冷却すると二水和物H2SiF6・2H2Oが析出する。二水和物は無色の結晶。融点19℃。四水和物H2SiF6・4H2Oも知られている。融点約0℃。水溶液は硫酸と同程度の強い二塩基酸。電離度(25℃)は、一規定では53%、0.1規定では76%。水溶液はわずかに2HFとSiF4に解離する。防腐剤、製紙工業に用いられる。また、鉛の電解精製の電解液となる。ナトリウム塩は、氷晶石やフッ化ナトリウムの製造、うわぐすり、ガラス、陶磁器の乳白剤などに用いられる。刺激臭をもち、きわめて有毒。
[守永健一・中原勝儼]