ヘキサフルオロケイ酸(読み)ヘキサフルオロケイサンエン

化学辞典 第2版 「ヘキサフルオロケイ酸」の解説

ヘキサフルオロケイ酸(塩)
ヘキサフルオロケイサンエン
hexafluorosilicic acid(hexafluorosilicate)

酸:H2SiF6(144.09).ケイフッ化水素酸(hydrosilicofluoric acid),フッ化ケイ酸(fluorosilicic acid)ということもある.SiO2HFとの反応や,SiF4と水との反応などで酸の水溶液が得られる.濃水溶液を冷却すると,二水和物H2SiF6・2H2Oが得られる.工業的には,りん灰石(フルオロアパタイト)Ca5F(PO4)3とケイ酸SiO2からリンを製造する過程で副生するSiF4を反応塔内の温水スプレーで除去する際に得られる.融点19 ℃.単離,または加熱すると半分以上がHFとSiF4に解離する.

H2SiF6 → 2HF + SiF4

酸は硫酸に匹敵する強酸で,多くの金属を溶かし,皮膚をおかす.鉛の電解精錬溶剤,金属表面処理,防腐セメントの硬化剤などに用いられる.アメリカでは大半の州で虫歯予防のために水道水に0.7~1.2 ppm 混入されている.アメリカ環境保護庁(EPA)飲料水上限値4 mg/L.日本では「フッ素及びその化合物」として水道法水質基準・フッ素の量に関して0.8 mg/L 以下,「硅弗化水素酸」として毒物及び劇物取締法・劇物,「弗素及びその水溶性無機化合物」として労働安全衛生法・名称等を通知すべき有害物,「ケイフッ化水素酸」として大気汚染防止法・有害大気汚染物質に指定されている.[CAS 16961-83-4] 
塩:各種の金属の塩が得られている.普通,金属またはその酸化物か炭酸塩をH2SiF6に溶解してつくる.いずれもイオン結合性で,正八面体型の [SiF6]2- をもつ.Si-F1.6~1.7 Å.Ba,Na,Kの塩は水に難溶である.なお,K2SiF6はhieratite,demartiniteとして,天然にシシリー島などの火山で見いだされる.それぞれの塩が,殺虫剤防虫剤,コンクリート硬化,窯業冶金などに利用されている.「硅弗化水素酸塩類及びこれを含有する製剤」は毒物及び劇物取締法・政令劇物.[CAS 16893-85-9:Na塩][CAS 16871-90-2:K塩][CAS 16925-39-6:Ca塩][CAS 17125-80-3:Ba塩]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘキサフルオロケイ酸」の意味・わかりやすい解説

ヘキサフルオロケイ酸
ヘキサフルオロケイさん
hydrosilicofluoric acid

化学式 H2SiF6フッ化ケイ素酸フルオロケイ酸,ケイフッ化水素酸などともいう。ケイ石 SiO2フッ化ケイ素と熱してつくる。濃水溶液を冷却すると,2水和物の無色結晶 (融点 19℃) が得られる。硫酸に匹敵する強酸で刺激臭がある。防腐剤製紙工業に用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘキサフルオロケイ酸」の意味・わかりやすい解説

ヘキサフルオロケイ酸
へきさふるおろけいさん

フッ化ケイ素酸

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