改訂新版 世界大百科事典 「フラッシオーバー」の意味・わかりやすい解説
フラッシオーバー
flashover
気体中の電極間が放電路によって橋絡されること。このときの放電形式が火花放電に対応する。液体中で同じ用語が用いられる場合がある。以前は閃絡ということばが用いられていたが,閃が当用漢字から外された折に,電気学会が英語のflashoverをこのように記述して正式な用語に採用して以来,日本の技術用語として広く使用されている。フラッシオーバーを生ずる電圧をフラッシオーバー電圧(しばしばFOVと略記される),一定電圧を印加したときにフラッシオーバーを生ずる確率をフラッシオーバー率という。
flashoverは元来,碍子やブッシングなどの固体表面あるいはその付近の気体中を通る放電を意味するが,日本語のフラッシオーバーは閃絡と同義語で固体表面でない場合も含んでいる。
送電線路においては種々な原因でフラッシオーバーが発生するが,雷に起因するものがもっとも多い。雷撃は架空地線で受けとめて鉄塔を通じて大地へ雷撃電流を導くのが耐雷設計の基本である。このとき雷撃電流が大きかったり電流波形の立ち上り峻度が大きいと,鉄塔部分や架空地線の電位が上昇して碍子や架空地線と導体間がフラッシオーバーすることがある。本来大地電位であるべき鉄塔や架空地線側の電位が高くなるために生ずるので,これを逆フラッシオーバーと呼ぶ。逆フラッシオーバーの回数を適切な値に納めるように送電線路の耐雷設計が行われる。
執筆者:河野 照哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報