日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フリー・トレード・ゾーン
ふりーとれーどぞーん
free trade zone
自由貿易地域。外国の貨物を通関手続きを経ずに輸入でき、加工、組み立て、梱包(こんぽう)、保管、展示して、ふたたび輸出できる区域。英語の頭文字をとってFTZとよばれる。そのほか、「外国貿易地帯」「保税加工区」「輸出加工区」「自由港」「関税上の外国」などとさまざまな呼び方がある。海港や空港の隣接地を、国が指定する場合が多い。輸出入時に関税がかからないだけでなく、為替管理や輸出入手続きなどが簡便で、税法上の優遇策を受けられることが多い。国内外からの企業誘致、貿易の促進・拡大、雇用増大、外貨獲得、地域経済の活性化などをねらって、世界各国・地域で導入されている。フリー・トレード・ゾーンに指定されると、地区内などに国際展示場やホテルなどが整備されるほか、周辺交通機関や地区内のインフラ整備が進む利点もある。日本では1987年(昭和62)12月に、沖縄県那覇(なは)市の一部が自由貿易地域(2002年からは国際物流拠点産業集積地域那覇地区)に、また、1999年(平成11)には沖縄県うるま市の一部が特別自由貿易地域(2002年からは国際物流拠点産業集積地域うるま地区)に指定された。
古くからスイスなどに関税をとらないフリー・トレード・ゾーンに似た概念の地域はあったが、制度として明確なフリー・トレード・ゾーンは1959年にアイルランドのシャノン空港近くに導入されたケースが最初とされる。2013年時点で、世界には2000を超えるフリー・トレード・ゾーンがあるとされる。アメリカは1980年代なかばから外国企業の誘致策として、全米各州に外国貿易地帯(foreign trade zone)を設置し、日本の自動車産業を誘致することに成功した。香港(ホンコン)、シンガポールは国・域内全体での外国製品の関税が非課税になる自由港(free port)地区である。中国の経済特区のほか、韓国、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピンなどの都市には、輸出入に関税などをかけずに部品や原料を加工・製造する輸出加工区(EPZ:export processing zone)が多数存在する。
[編集部]