デジタル大辞泉 「貨物」の意味・読み・例文・類語
か‐もつ〔クワ‐〕【貨物】
2 「貨物列車」の略。「
3 品物。荷物。かぶつ。
「おみや母子への土産にとて、浜にて整へたる『形なき―』」〈逍遥・内地雑居未来之夢〉
[類語]荷物・荷・手荷物・小荷物・小包・積み荷
か‐ぶつ〔クワ‐〕【貨物】
2 貨幣や財産。
[補説]1の意味では、明治初期までは「かもつ」より「かぶつ」が一般的であった。
現在では①は「かもつ」といっているが、明治期の辞書では「かぶつ」が普通。また、現在でも法律の条文では②の意味で「かぶつ」と読むのが慣習。
輸送機関によって運ばれる物品の総称。貨物を取り扱う形態から分類すると、一般貨物と特殊貨物に分けることができる。特殊貨物とは特別な荷扱いや積み付けを必要とする貨物であり、液体、粉流体、動物、植物、重量品、危険品などが含まれる。これに対して一般貨物とは、雑貨ともよばれているが、特殊な取扱いを必要としない貨物の総称である。われわれが通常目にする段ボール箱に詰められた工業製品、食料品、農産物などが、一般貨物に分類される。
マクロ的に貨物の規模を測る単位としては、重量であるトン数と、これに輸送距離(キロメートル)を掛け合わせたトンキロがある。わが国の貨物輸送量は1950年代後半からの高度経済成長期に大幅に増大したが、1970年代に入ると成長は鈍化した。1999年度(平成11)の貨物輸送トンキロは5581億トンキロであり、これは1960年度(昭和35)の4倍に達している。
貨物を運ぶ輸送機関は、自動車(トラック)、鉄道、内航海運、航空があり、それぞれの輸送機関が運んだ貨物の割合は輸送機関分担率として示される。わが国における輸送機関分担率をみると、貨物の輸送はトラックに依存する傾向が一段と強まっている。2000年度(平成12)のトン数ベースにおけるトラックの輸送機関分担率は、90.6%であり、これに対して内航海運8.4%、鉄道0.9%、航空0.0%である。貨物輸送ではトラックが圧倒的なウエイトを占めており、これとは対照的にかつての主要な輸送機関であった鉄道は著しく役割を減じている。また輸送距離を加味したトンキロでは、トラック54.2%、内航海運41.8%、鉄道3.8%、航空0.2%であり、本来長距離輸送において競争力をあまりもっていなかったトラックがトンキロベースでもいまや最大の輸送機関となっている。
現代の貨物輸送では輸送コストの削減、輸送時間の短縮、輸送の利便性などが強く求められている。トラックは他の輸送機関に比較してこうした条件に適合しており、その結果として、経済活動によって生じる貨物の大部分の輸送を担っている。
最近、貨物に大きな変化が生じている。まず輸送対象となる貨物が軽く、薄く、短く、小さくなっており、こうした現象は軽薄短小化とよばれている。たとえば、コンピュータなどに端的に示されるように、技術革新の進展によって製品がますます小型化している。貨物自体が小型化しているために、20~30キログラムを上限とする小型貨物輸送サービスである宅配便の範疇(はんちゅう)に貨物が収まるようになっている。貨物における軽薄短小化の傾向は、宅配便市場が急激に拡大する要因の一つと考えられている。
さらに最近では貨物の運ばれる形態が大きく変化している。これは多頻度小口化とよばれる。たとえば、工場や店舗に納められている貨物は従来1週間に1回まとめて輸送されていたが、納入先の要望によって毎日配送されるようになる。単純に計算すると、これによって輸送回数は従来の7倍に増加し、1回当りの貨物の量は従来の7分の1に減少する。こうした多頻度小口化は、納入先の企業が、運ばれてくる貨物を在庫として抱え込まないように、むだを排除するために行われている。「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」配送するジャスト・イン・タイム(just in time)輸送はこの多頻度小口化の典型である。
現在では多頻度小口化が一般に普及している。こうした形態での貨物の輸送は、発注する側の都合が最優先されており、逆に納入する側の企業は物流システムがいっそう複雑になったり、コストの増加を招いたりしている。また、多頻度小口化が普及することによって、マクロ的には非効率な輸送の回数が増加し、環境問題や交通渋滞の悪化など道路交通への影響が懸念されている。
一般貨物においてもさまざまな形状や特質があるが、それらの貨物の取扱いをいかに効率的に行うかが大きな課題であった。こうした課題を実現するための方式として、コンテナやパレットがある。
コンテナは一定の規格に統一された輸送用の容器であり、これに貨物を積み込めば異なる各種の輸送機関に積載可能で、一定の強度が保たれて貨物を保護することができる。またコンテナ自体も反復的に使用することが可能である。国際海上輸送では、20フィート(約6メートル)や40フィートの国際的に統一した規格のコンテナに輸出入貨物が積み込まれている。こうしたコンテナの利用により、港や貨物駅といったターミナルでの荷役が大幅に効率化されて、貨物の輸送効率や輸送時間が改善された。貨物をコンテナで運ぶ方式が普及することをコンテナリゼーション(containerization)とよんでいる。
また貨物を輸送機関に積載する荷役作業を効率化するためにパレットが使われている。パレットは荷役や格納のための規格化された荷台のことであり、パレットの上に貨物を載せ、これをフォークリフトで輸送機関に載せたり、輸送機関から降ろしたりすることで荷役効率を大幅に効率化することができる。また貨物をパレットに積み付けて、発地から着地までその貨物を取り崩すことなく、一貫して輸送・保管することを一貫パレチゼーション(palletization through transit)とよんでいる。
[齋藤 実]
『野村宏著『輸送産業』(1980・東洋経済新報社)』▽『中島啓雄著『現代の鉄道貨物輸送』(1997・成山堂書店)』▽『カーゴニュース編著『現代のトラック産業』(1998・成山堂書店)』▽『桜井徹他著『交通運輸』(2001・大月書店)』
国際,国内を問わず輸送の対象となる物品を貨物goods,freight,cargoという。国際的にも国内的にも生産の分業化が進展するにつれて商品取引が拡大し,市場の地域的拡大も進む。このような商品市場の地域的拡大を可能にするのが輸送活動であり,輸送の対象となる商品が貨物である。19世紀後半になって国際貿易が活発になるにつれて穀物,鉱石,金属,その他原材料の輸送がふえていった。国際取引の対象となる貨物は,当初はおもに大量に輸送される嵩高(かさだか)貨物bulky cargoであり,乾貨dry cargoであった。工業化がまだ未成熟であったときの国際取引の対象はこのような貨物が中心であり,繊維,羊毛,茶,金属類のような貨物なども広く輸送された。20世紀に入って工業生産が増大してくると工業国相互間貿易が活発になり,工業製品の輸送が増大するようになった。工業製品はバラ貨物ではなく,木箱などで包装された個品であり,そのような輸送を個品運送(ドイツ語でStückverkehr)という。工業製品は大量・単一の商品ではなく,種々雑多な商品からなり,統計上は雑貨sundry cargoとして分類される。ところが1960年代に入って石炭から石油へのエネルギー転換(エネルギー革命)が進むにつれて,原油やその他石油製品が液体貨物wet cargoとしてタンカー(油送船)で輸送されるようになった。現在ではおもに中近東から世界各国に向けて,このようなタンカー・カーゴが輸送されている。南半球から北半球への輸送は原油をはじめ鉄鉱石,金属鉱物,木材,食肉等の原材料,食料などが中心である。それに対して北半球から南半球への輸送は自動車,鉄鋼,機械,器具などが中心である。
一方,国内輸送においては,貨物の物理的性質によって分けると,危険品dangerous goods,易損品fragile goods,粉粒体,液体というような品質・形状のちがう貨物が輸送の対象となる。輸送上の取扱い,運賃計算上の区分としては,特大品,長尺物,嵩高品,小量物品などと呼ばれる貨物のグループがある。この分類は危険品,易損品などの物理的特性からの分類とともに,貨物の代表的分類方法である。なぜならば,貨物を商品としての特性から分類したものではなく,輸送の取扱い上の難易度との関係から分類したことになるからである。輸送方法との関連から分類すれば,鉄道輸送における車扱貨物,混載貨物,コンテナー扱貨物などの分類になる。さらに生産・流通などの経済活動との関係から分類されることもある。砂利・セメント,鉄鋼のような骨材をはじめ各種の原材料,卸売・小売などの流通段階で取引の対象となる商品貨物,一般消費財,贈答品などの家庭貨物というような呼び方もある。以上のような貨物の分類方法は,統計上の分類として採用されているものもあるが,多くは現実の輸送活動・取引上の必要から使われるようになった分類方法である。
執筆者:岡田 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…JRの貨車を使用して運送する貨物をいう。コンテナーを使用して運送する貨物はコンテナー貨物とよぶ。…
…鉄道で輸送される貨物の集配,積卸し,取次ぎを行う事業について1990年まで用いられていた名称。鉄道貨物輸送は,線路上の鉄道輸送そのものと,その両端の貨物駅と荷主との間を結ぶ通運とから成立しており,これら両者が結合することによって,はじめて発荷主から着荷主の間における一貫輸送が行える。…
※「貨物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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