改訂新版 世界大百科事典 「ブッダパーリタ」の意味・わかりやすい解説
ブッダパーリタ
Buddhapālita
470-540年ころのインドの大乗中観(ちゆうがん)派の学者。仏護と音訳される。南インドに生まれ,清弁(しようべん)とともにサンガラクシタ(衆護)に就いて竜樹の教説を学び,空の思想を強調した。清弁が中観派と並ぶ大乗仏教学派である唯識学派との対抗上,師説に反して自派の主張を確立する立場(スバタントラ)を主張したのに対し,仏護は師とともに竜樹のプラサンガ論法(相手の論理の矛盾をつき,過誤を認めさせる帰謬論証法)を守って,《中論注》を著した。これより中観派は二分し,彼の系統をプラーサンギカ(帰謬論証)派といい,清弁の系統をスバータントリカ(自立論証)派という。前者は,はじめ後者に押されぎみであったが,7世紀にチャンドラキールティ(月称)が出て盛り返し,チベットでも流行をみた。
→中観派
執筆者:田中 教照
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報