清弁(読み)しょうべん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「清弁」の意味・わかりやすい解説

清弁
しょうべん
(490ころ―570ころ)

インド仏教中観(ちゅうがん)派の学者。サンスクリット名はバーバビベーカBhāvavivekaまたはバビヤBhavya。龍樹(りゅうじゅ)の『中論』に表れる空(くう)の思想を論理学的な推論式によって積極的に論証するという方法を確立した。まず『中観心論』を著し、その方法によって空を論証できることを明らかにし、他学派の説を批判し、のちに『中論』の注釈書『般若燈論(はんにゃとうろん)』、空思想の概説書『大乗掌珍論(しょうちんろん)』を著述した。しかしその論理学的方法は後代に月称(7世紀)によって批判され、中観派分裂の起因となったとされる。

[江島惠教 2016年11月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「清弁」の意味・わかりやすい解説

清弁 (しょうべん)
生没年:490-570

インドの仏教思想家。サンスクリット名をバーバビベーカBhāvavivekaまたはバビヤBhavyaという。仏教論理学者ディグナーガの影響を受けた中期中観思想家で,自立論証によって空性を論証すべきであると主張して中観派のブッダパーリタを批判したが,後にその主張はブッダパーリタ系統の帰謬論証派の代表者チャンドラキールティに批判された。しかしその学系は,ダルマキールティの論理学の影響を受けたジュニャーナガルバ,シャーンタラクシタカマラシーラによって引き継がれ,チベットでは自立論証派と呼ばれた。著書には《中観心論》《思択炎》《般若灯論》《掌珍論》がある。なお《中観宝灯論》《中観義集論》の作者は同名異人である。
中観派
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「清弁」の意味・わかりやすい解説

清弁
しょうべん
Bhavya; Bhāvaviveka

[生]490頃
[没]570頃
インド大乗仏教の主要な学派である中観派学僧龍樹の空の思想を受け,独自の論証によって空の理論を展開し,いかなる主張も必ず誤りに帰することを主張するブッダパーリタ (仏護。 470頃~540頃) と対立した。清弁の派をスバータントリカ派と称し,ブッダパーリタの派をプラーサンギカ派という。

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普及版 字通 「清弁」の読み・字形・画数・意味

【清弁】せいべん

明弁

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