竜樹(読み)リュウジュ

デジタル大辞泉 「竜樹」の意味・読み・例文・類語

りゅうじゅ【竜樹】

《〈梵〉Nāgārjunaの訳》2世紀中ごろから3世紀中ごろのインド大乗仏教中観ちゅうがんの祖。南インドのバラモン出身。一切因縁和合・一切皆空を唱え、大乗経典の注釈書を多数著して宣揚した。著「中論頌ちゅうろんじゅ」「大智度論」「十住毘婆沙論」など。ナーガールジュナ

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百科事典マイペディア 「竜樹」の意味・わかりやすい解説

竜樹【りゅうじゅ】

インドの仏僧。150―250年ころの人。大乗仏教の大成者。サンスクリット名ナーガールジュナ。竜猛(りゅうみょう),竜勝とも。南インドのバラモン出身。出家して初め小乗仏教を学んだが,のちヒマラヤ山中で老比丘(びく)より大乗経典を与えられ,以後大乗仏教を奉じたという。また南海竜宮至り,多くの大乗経典を得たという伝説もある。著作は大乗経典の注釈書が多く,晩年を南インド,クリシュナ川上流の黒蜂山で過ごした。小乗仏教の有(う)の哲学を破り,万物には不変の実体のないこと((くう))を明らかにし,有と無の両端を排して中観を立て,大乗仏教の理論的開拓者となった。竜樹の系統を中観派(ちゅうがんは)と呼び,中国や日本では八宗の祖,真言宗では第3祖とする。著書《中論》《十二門論》《大智度論(だいちどろん)》《十住毘婆沙(びばさ)論》など。
→関連項目一心三観クマーラジーバ三論浄土教諸法実相真言宗僧肇大乗仏教曇鸞仏教

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世界大百科事典 第2版 「竜樹」の意味・わかりやすい解説

りゅうじゅ【竜樹】

150‐250年ころのインド大乗仏教の哲学者。生没年不詳。サンスクリット名をナーガールジュナNāgārjunaという。南インドのバラモン出身で,若くしていっさいの学問に通じ,隠身の術により後宮に入って快楽を尽くしたが,欲望は苦の原因であると悟って出家したと《竜樹菩薩伝》に伝えられている。彼は,大乗仏教の基盤であり,〈般若経〉で強調された,〈空〉の思想を哲学的に基礎づけ,後世の仏教思想全般に決定的影響を与えた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「竜樹」の解説

竜樹(りゅうじゅ)

ナーガールジュナ

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世界大百科事典内の竜樹の言及

【インド哲学】より

…仏教においては,諸部派の中説一切有部が有力で,法実有論を唱え,原子論を主張し,2世紀以降北インド一帯に広まった。大乗仏教では竜樹(ナーガールジュナ,150‐250ころ)が空性説を唱えて,法実有論を徹底的に攻撃した。彼の学系は中観派といわれる。…

【十住毘婆沙論】より

…インド大乗仏教の論書。竜樹(ナーガールジュナ。150ころ‐250ころ)の著とされるが,疑問も呈されている。…

【大智度論】より

…サンスクリット原典はなく,クマーラジーバ(鳩摩羅什)訳の漢訳のみが現存する。著者は竜樹とされるが,疑問も出されている。《大品(だいぼん)般若経》の注釈で,全100巻の膨大なものであるが,原書はその10倍もあり,クマーラジーバは最初の34品(《大品般若経》の序品に相当)のみ全訳し,以下は抄訳したという。…

【提婆】より

…サンスクリット名をアーリヤデーバĀryadevaという。南インドまたはスリランカの出身で,中観派の祖竜樹の弟子となり,空観の思想を宣揚した。その思想的特徴は,破邪の強調にあるとされ,激しく小乗や外道(仏教以外の宗教,哲学)を批判したため,ついには外道によって斬殺されたという。…

【中論】より

…インド大乗仏教の論書。竜樹(ナーガールジュナ)著。サンスクリット原典,チベット語訳,漢訳(クマーラジーバ訳)が現存。…

【不可知論】より

…したがって,インドの神秘主義者のほとんどは同時に不可知論者でもあった。例えばウパニシャッドの哲人ヤージュニャバルキヤは,アートマンは〈そうでない,そうでない〉としかいいようのないものであるとし,大乗仏教の中観派の論者ナーガールジュナ(竜樹)は,世界は不生不滅,不一不異,つまり空であり固定的言語表現による真如の把握は不可能とした。また,宗教実践上の観点から,さまざまな世界のものごとについての判断は無用である,ないしそのような判断を停止したほうが心の平安が得られるとする考えも有力であった。…

【竜猛】より

…150‐250年ころの人。サンスクリット名ナーガールジュナNāgārjuna,竜樹とも訳される。大乗仏教の基礎を築き,中国,日本における八宗派の祖ともいうべき竜樹と同一人物とされ,とくに密教の方面で竜猛と呼ばれ,密教を初めて世に流布させた人として尊重される。…

※「竜樹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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