改訂新版 世界大百科事典 「ブラウアー」の意味・わかりやすい解説
ブラウアー
Dirk Brouwer
生没年:1902-66
アメリカの天文学者。オランダの生れ。ライデン大学でデ・シッテルの指導を受け1927年学位を得る。次いで1年の奨学金を得てアメリカに渡った。28年にイェール大学を訪れたのを機に同天文台長F.シュレジンジャーの勧めで講師となり,41年には教授となってシュレジンジャーの後を継いだ。ブラウアーの業績は天体力学の広い分野にわたり,外惑星の運動,近接衛星の運動,小惑星の族と空隙,地球の自転運動,人工衛星の運動,大型計算機の天体力学への応用,天文定数系などがあげられる。これらの個人的研究業績に加えて,ブラウアーは人工衛星時代を迎えたアメリカの天体力学専門家の養成に尽力し,59年から毎年イェール大学天文台の主催で〈天体力学夏の学校〉を開催した。また,62年秋にはイェール大学に〈天体力学研究センター〉を設立した。しかしこうしたことが過労となって,ブラウアーはセンター設立後3年半ばでたおれた。天体力学夏の学校も天体力学研究センターも現在ないが,そこで教育を受けた研究者は現在NASAやJPLで活躍している。1951年科学アカデミー会員,55年王立天文学会金牌受賞。著書に《天体力学の方法》(1961)がある。
執筆者:堀 源一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報