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人工衛星 じんこうえいせい artificial satellite

7件 の用語解説(人工衛星の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

人工衛星
じんこうえいせい
artificial satellite

地球を回る人工の天体。 1957年 10月4日,ソ連が史上最初のスプートニク1号の打上げに成功,58年1月にはアメリカエクスプローラ1号を軌道に乗せた。以来おびただしい衛星が地球のまわりを回るようになった。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

人工衛星

上空3万6千キロの静止軌道を回る気象衛星通信衛星は、開発費が数百億円、重さも数トンになる。一方、大学を中心に開発が盛んなのが1辺10センチ、重さ1キロ程度のサイコロ形の「キューブサット」。1機数百万円の開発費でできるという。ウェザーニューズ社が開発するのはこれより一回り大きいタイプ

(2008-07-02 朝日新聞 夕刊 2社会)

出典|朝日新聞掲載「キーワード」
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デジタル大辞泉の解説

じんこう‐えいせい〔‐ヱイセイ〕【人工衛星】

ロケットで打ち上げられ、地球や月など太陽系の惑星の周囲を公転する人工の物体。ソ連が1957年に打ち上げたスプートニク1号が最初。

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監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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百科事典マイペディアの解説

人工衛星【じんこうえいせい】

地球(広義には他の惑星を含める)の周囲の軌道を回る人工物体のうち具体的目的のあるものをさし,使用ずみのロケットやそれらの破片は浮遊物として区別する。公転軌道と周期などの関係は基本的にはケプラーの法則に従う。
→関連項目アルゴス・システム軍事衛星航空宇宙工業人工天体測地衛星偵察衛星ディスカバラー衛星ロケット(工学)

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世界大百科事典 第2版の解説

じんこうえいせい【人工衛星 artificial satellite】

広義には惑星,主として地球のまわりを周回する人工の物体を指す。通常はそれらの中でも具体的な目的をもつものを指し,使用ずみロケットおよびそれらの破片などは浮遊物として区別する。
[歴史]
 人工衛星の原理的な構想は,19世紀後半にまでさかのぼり,ロシアのK.E.チオルコフスキーがロケットを使用して宇宙船打ち上げるという構想を発表したことに始まる。その後20世紀に入ってからも,H.オーベルト,R.ゴダードらによる研究が行われたが,第2次世界大戦中に,W.vonブラウンがV2ロケットを開発するに至り,打上げ手段の点で急速に実現に近づいた。

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大辞林 第三版の解説

じんこうえいせい【人工衛星】

ロケットによって打ち上げられ、地球の周りを公転する人工物体。気象観測・科学観測・通信中継などに使用される。1957年にソ連が打ち上げたスプートニク1号が最初。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人工衛星
じんこうえいせい
artificial satellite

地球の衛星である月と同様に、地球の引力とつり合う遠心力を生ずるような速度で地球を周回する物体は、外力(たとえば空気の抵抗)の影響を受けなければ、永久にその軌道上を惰性で飛び続ける。このような物理法則を利用して、ロケットを用いて地球上から打ち上げ、これに必要な速度を与えて地球周回軌道に乗せたものを人工衛星という。
 人工衛星となるのに必要な速度は、たとえば高度500キロメートルの地球周回円軌道の場合は毎秒約7.9キロメートル、気象衛星「ひまわり」で知られる静止軌道の高さ約3万6000キロメートルの場合は毎秒約3.1キロメートルである。地球を周回する人工衛星は、かならず地球中心を含む軌道を通ることになり、北極と南極を通る軌道や赤道上空を通る軌道などになる。地球周回軌道に乗った人工衛星は、追跡管制という電波による地上からの指令で、姿勢を制御したり観測を行ったりする。[森山 隆]

人工衛星の歴史

ロケットを用いて人工衛星を打ち上げることが可能であるという宇宙航行の理論は、ロシアのツィオルコフスキーの研究が代表的である。またアメリカのロケットの父といわれるゴダードは、1926年に液体酸素とガソリンを用いた世界初の液体燃料ロケットを開発、フォン・ブラウンは1942年に液体燃料のV2ロケットを完成させた。日本では1955年(昭和30)に糸川英夫がペンシル・ロケットの水平発射実験を行っている。このような先駆者たちの技術開発を経て、10トンを超える大型の人工衛星や、スペースシャトルの打上げができるようになった。
 1957年に世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げたソ連は、同年スプートニク2号でライカ犬を宇宙に送った。1961年にはガガーリンが世界初の有人宇宙飛行(地球を89分で周回し、打上げ後108分で地球に帰還した)を成功させた。その後もソユーズやエネルギアといった超大型のロケットを開発し、多様な宇宙ミッションを実施している。
 ソ連に後れをとったアメリカは、1958年に初の人工衛星エクスプローラ1号を成功させ、1962年にはアトラスロケットでグレンJohn H. Glenn(1921― )宇宙飛行士を乗せた初の人工衛星フレンドシップ7号を成功させた。アメリカはその後も多くのロケットとさまざまな人工衛星(偵察衛星、地球観測衛星、通信衛星、惑星探査衛星など)を打ち上げ、1969年には世界最大級のサターン型ロケット(全長110メートル、直径10メートル、打上げ時総質量3000トン)を開発し、地球周回軌道から離脱するアポロシリーズの月探査船を打ち上げ、人類初の月面着陸・帰還を果たした。
 日本は1970年(昭和45)にラムダロケットで初の人工衛星「おおすみ」(約24キログラム)を打ち上げた。その後はミューロケットなどで科学観測の人工衛星を次々に打ち上げ、2010年(平成22)には「はやぶさ」が小惑星イトカワの資源サンプルを持ち帰るという快挙を成し遂げた。実利用では、N‐、N‐、H‐、H‐ロケットなどで静止気象衛星、通信衛星、放送衛星、地球観測衛星などを数多く打ち上げ、宇宙の実利用を推進している。
 中国とインドも「長征」、SLVなど独自のロケットを開発し、さまざまな人工衛星の打上げを行っている。
 2000年の後半からは、民間や大学などが独自の人工衛星(地球観測や通信)を打ち上げる機会が多くなり、小型(50~数百キログラム)の人工衛星がコスト、開発期間の短縮で顕著になっている。
 人工衛星を打ち上げる目的は、(1)気象観測や地球観測、(2)地球を取り巻く大気や磁気圏、月や太陽系惑星、恒星、銀河などの天体観測、(3)宇宙通信や放送、カーナビゲーションに利用される測位などの実用衛星がある。私たちの日々の生活に人工衛星は欠かすことのできない存在であるとともに、人類の知見を広げ、宇宙の新たな活用を開く重要な手段である。
 (1)の地球観測では、「ひまわり」に代表される気象観測が中心となって発展してきた。日々の天気予報や台風などの気象情報は、生活に欠かすことのできない情報として社会に定着している。また、地球環境の変化や気候変動などの現状を把握し、将来を予測するための地球規模の長期的な展望にたった観測が、国際協力で進められている。一方で、地球観測衛星は地表面を高精度(1メートル以下の解像度)で観測することができるため、災害監視や土地利用状況の把握、国土保全などにも広く使われる。
 (2)の科学観測は地球自身を知ることから始まり、月や太陽、太陽系惑星の探査、銀河系外の天体観測や宇宙の起源を知るための深宇宙の探査などが行われている。月や太陽系惑星では、周回軌道からの観測にとどまらず、軟着陸して土壌サンプルを採取して持ち帰ることも行う。天体観測ではハッブル宇宙望遠鏡(1990年打上げ)が新しい宇宙の姿を次々に明らかにし、X線やγ(ガンマ)線の科学観測では、超新星の発見やブラック・ホールの存在の検証なども行われている。
 (3)の宇宙通信・放送・測位は、宇宙を利用したインフラストラクチャー(社会的生産基盤)として、日々の生活に欠かせないものとなっている。宇宙通信はますます高速・大容量化し、地域の情報格差の解消に大きく貢献している。衛星放送は地上波よりも高品質の画像がどこでも見られるようにしてくれた。測位衛星(全地球測位システム=GPS)は、船舶や航空機の安全で効率的な航行、迷うことなく目的地までの道筋を教えてくれるカーナビゲーションなど、その応用は多岐にわたっている。
 人工衛星によって、宇宙技術がより信頼性の高いものとなり、人類の夢であった宇宙飛行が実現した。それはアポロ月探査船のような使い捨ての宇宙船ではなく、宇宙を繰り返し往還できるスペースシャトルの登場である。アメリカは1981年からスペースシャトルの運用を開始し、2010年までに合計134回の飛行を行った。スペースシャトルで人を宇宙に送る先は、国際宇宙ステーション(ISS)である。ISSはアメリカ・ヨーロッパ・日本・カナダなどが協力して開発・運用している。地球上約400キロメートルの高度を周回する巨大な(太陽電池パネルを広げるとサッカー場ほどの大きさになる)宇宙船である。長期の宇宙滞在を可能とし、微小重力と高真空の環境を生かしたさまざまな材料実験や生物実験等が行われている。最大で6名の宇宙飛行士が滞在でき、日本人宇宙飛行士も2011年までに9名が滞在して実験を行っている。[森山 隆]

人工衛星の力学

人工衛星の運動についての力学的考察は、当初はその質量中心が宇宙空間の中でどのような運動をするかを解析する軌道力学を取り扱うのみでよかった。ところが衛星の機能が高度化するのに伴い、衛星本体や搭載装置を高精度で所定の方向に向けたり、精密な軌道の保持や軌道変換などを行う必要がでてきた。そのため、衛星の質量中心の周りの回転を解析する姿勢力学も重要な位置を占めるようになった。
 地球を周回する人工衛星の公転運動は、太陽を周回する惑星と類似のもので、ケプラーが惑星に対して経験的に導いた3法則が適用される(ケプラーの法則)。すなわち
(1)人工衛星は地球の質量中心を一つの焦点とする楕円(円を含む)上を運行する。
(2)地球の質量中心と人工衛星とを結ぶ動径が単位時間に掃き払う面積は一定である(面積速度一定の法則)。
(3)人工衛星の軌道長半径の3乗を公転周期の2乗で割った値はすべての人工衛星について一定になる(調和法則)。
 このような性質をもって周回する人工衛星の軌道を表すのに必要な六つの量を軌道要素という。通常用いられている軌道要素は、ケプラーの六要素とよばれる次のようなものである。
(1)軌道長半径 楕円の長軸の半分の長さとして定義され、楕円軌道の大きさを与える。
(2)軌道離心率 楕円軌道の形を定める。
(3)軌道傾斜角 人工衛星の軌道が乗っている平面(軌道面)が地球の赤道面となす角度。
(4)昇交点赤経 人工衛星の軌道が地球の赤道面を南側から北側に貫く点を昇交点とよび、地球の中心からみて春分点方向と昇交点方向の間の角を昇交点赤経という。軌道傾斜角と昇交点赤経を与えることによって、宇宙空間の中における軌道面の位置が定まる。
(5)近地点引数(ひきすう) 人工衛星の軌道上で地球にもっとも近づく点を近地点、もっとも遠ざかる点を遠地点という。軌道面上における楕円の向きを定義するために、昇交点方向と近地点方向とのなす角を用い、これを近地点引数という。
(6)近地点通過時刻 任意の時刻における人工衛星の軌道上における位置を計算可能とするために、人工衛星が近地点を通過する時刻を与える。
 この六つの量が与えられると、過去から将来にわたる任意の時刻において、人工衛星が宇宙空間のどこに位置して、どのような速度をもっているかを計算することが可能である。これらの六要素の値は、第一近似としてはつねに同じ値を保ち、人工衛星は同一の軌道上を運行し続けるが、実際には地球の赤道部分が膨らんでいるための引力、月や太陽の及ぼす引力、地球大気による抵抗力などの影響を受けて、軌道の状態は時がたつにつれて変化していく。この現象を軌道の摂動という。
 人工衛星の姿勢を維持する方法として、衛星を「こま」のように一つの軸の周りに自転させて姿勢を安定させるスピン制御方式と、衛星内に高速で回転するはずみ車(ホイール)を各軸方向に取り付けて制御する三軸制御方式とがある。スピン制御方式は、比較的制御が簡単であるため気象衛星「ひまわり」5号まで使われた方式であり、衛星自身のスピンとセンサーの南北方向走査を組み合わせることで、地球映像(おもに雲の動きと温度)を取得する。一方で、地球を周回しながら高精度で地表面や海洋を観測する地球観測衛星は、センサー(カメラ)をつねに地球方向に向けながら飛行する必要があるため、三軸制御方式となる。電力を発生するための太陽電池パネルは、つねに太陽方向を指向するように制御される。[森山 隆]

人工衛星の観測

人工衛星の軌道を決定するには、地上からの直接観測によって測定を行う。観測方法は、光学的手段によるものと、電波を利用するものがある。光学的な手段としては、シュミット・カメラのように視野が広くて明るい光学系を備えた望遠鏡で人工衛星を背景の恒星と同時に撮影し、恒星の位置を基準として人工衛星の位置する方向を求めるものと、レーザー光を人工衛星に向けて発射し、衛星に取り付けられた反射器によって反射され、戻ってくるのに要する時間から距離を求めるのが代表的な方法である。
 電波を利用する方式では、電波を地上局と人工衛星との間に往復させ、その所要時間から距離を求めるもの、ドップラー効果によって生ずる送信周波数の変移を測定して、地上局と衛星との間の距離が時間とともにどのように変化するかを知る方法、複数個のアンテナを組み合わせて干渉計とし、それぞれのアンテナに電波が到達する時刻のわずかな相違から衛星の方向を求める方法などがある。一般に測定精度は波長の短い光学的手段によるものが高いが、天候や観測可能な時刻に制限があるという難点がある。電波では天候に左右されず、観測データをただちにコンピュータと結び付けて実時間処理が可能であるという長所がある。
 人工衛星は能動的な制御なしでは、軌道上でどのような方向を向いて飛行しているのかがわからなくなる。これでは目的の場所の観測ができなくなり、太陽電池による発電や熱制御に支障をきたすなど、衛星運用上重大な問題となる。人工衛星の姿勢を求めるための観測装置としては、太陽方向とのなす角を求める太陽センサー、地球方向とのなす角を求める地球センサー、明るい恒星を基準に姿勢を求める恒星センサーなどがある。これらのセンサーのデータを用いて人工衛星の宇宙空間での姿勢を計算することができる。また、測位衛星(GPS)の位置情報を併用することで、地表の特定地点との対応付けも可能となる。[森山 隆]

人工衛星の軌道と打上げ

人工衛星は、それぞれの目的を達成するのにもっとも適した軌道(高度・傾斜角・楕円の形)が選択され、その軌道に乗るようにロケット、あるいはスペースシャトルなどを用いて打ち上げられる。たとえば地球の北極と南極を通り、赤道とほぼ直交するように飛行する極軌道衛星は、地球の自転を利用することで地球全体をくまなく繰り返し撮像することができることから、高度数百キロメートルから1000キロメートル程度を周回する地球観測衛星や偵察衛星などに適している。地球周回軌道を回る衛星は、選択する軌道によって1日から数十日かけて同一地点に戻ってくるので、地球全体を繰り返し撮影するのに都合がよい。地球周回軌道に投入される衛星にはこのほかに、赤道上空を周回する衛星や、中緯度帯のみ観測する衛星などがある。また移動体通信サービスを行う地球周回通信衛星群(70機)も全世界を100%、シームレスに(切れ目なく)カバーする通信サービスを提供する事業として行われている。
 ケプラーの第三法則(調和法則)によって、円形の軌道をもつ人工衛星が地球を1周するのに要する時間は、地表面からの高さが高くなるにしたがって長くなる。地上200キロメートルを周回する人工衛星は1時間28分で地球を1周してくるが、1万キロメートルの高度では1周5時間47分を要する。もし3万5790キロメートルという高度に衛星が投入されると、地球を1周するのに要する時間は23時間56分となって、地球が1回自転するのに要する時間(1恒星日)と一致する。したがって、この高さに衛星が赤道上空を東向きに飛ぶように打ち上げれば、地球表面からこの衛星を見た場合、いつでも空の1点に静止しているように見える。このような軌道に乗せられた人工衛星を静止衛星とよぶ。3個の静止衛星を赤道上に等間隔に並べると、両極地方を除いた地球の大部分の地域を可視範囲に置くことができるので、通信の中継基地としての通信衛星、放送衛星、また気象監視の観測局としての役目を果たす気象衛星の軌道として最適である。
 人工衛星を打上げ射場から3段式のロケットで打ち上げて、所定の軌道に投入するまでの流れを、静止気象衛星を例にとって概説する。3段式の打上げロケットは、まず第1段および補助ロケットに点火されて射点から垂直に上昇し、あらかじめセットされたプログラムどおりに進行方向および地平面との傾きを定め、数分後には燃え尽きた第1段ロケットの燃え殻部分を切り離す。引き続いて第2段ロケットに点火後、ロケットが大気中を飛行時に、衛星を空気加熱や外部音響などから保護する衛星フェアリングを分離する。第2段ロケットの燃焼により、衛星を搭載した第3段ロケット部分を高さ約200キロメートルの待機軌道(パーキングオービット)に投入し、姿勢を安定させるために毎分50回程度の自転速度(スピン)を与える。待機軌道上を飛行する第3段目のロケットは、赤道上空を通過する際に点火され、遷移軌道(トランスファーオービットとよばれる。近地点高度約200キロメートル、遠地点高度約3万6000キロメートルの軌道)に移行し、ここで衛星を分離する。打上げから衛星分離までに要する時間は約25分である。
 ロケットから切り離された衛星はスピンを続けながら遷移軌道上を約10時間半の周期で飛行する。何回か周回を続けている間に衛星の姿勢を微調整して、衛星に固定されている固体ロケット(アポジモーター)により、所定の方向に向ける制御を行う。その後、予定の遠地点に差しかかったときにアポジモーターに点火し、衛星をほぼ静止軌道に等しい漂流軌道(ドリフトオービット)に投入する。そのために、速度の増加と、軌道面を赤道面に一致させる二つの制御をアポジモーターにさせるのである。制御後の軌道は、ほぼ赤道上高度3万6000キロメートルの円軌道となるが、一般に軌道傾斜角が0度となっておらず、また地球を1周する周期が厳密に地球の自転周期と一致していないために、静止軌道とはならないで、わずかばかり南北方向に揺れ、また東西方向に移動していくようにみえる。そのためにこの軌道は漂流軌道といわれる。この東西方向の移動を利用して衛星を所定の位置まで移動し、数回の軌道制御によって予定された経度の赤道上に静止させる。打上げから静止までに要する日数は、通常2週間前後である。人工衛星が静止軌道に投入された後も、地球の重力場や、太陽や月の引力の影響によって、静止衛星の位置は少しずつずれていくために、定期的な起動制御が必要となる。[森山 隆]

人工衛星の構成

人工衛星はそれぞれの目的に応じた機器を搭載している。たとえば通信衛星では人工衛星と地上との通信回線を結ぶ通信中継器(トランスポンダー)、地球観測衛星では大気中の二酸化炭素の濃度や土地被覆の調査、海面水温や海上風などを測る光学センサーや電波センサー、惑星探査などでは土壌サンプルなどを採取し持ち帰る装置などで、これらをミッション機器という。一方、目的にかかわらず人工衛星には共通に必要な基本的な機器がある。これらをバス機器とよぶ。以下、おもなバス機器を解説する。
 人工衛星に電力を供給する手段として、太陽光により光電変換を行い、電力を発生させる太陽電池パドルと、その電力を蓄え、機器に供給するバッテリーがある。太陽電池パドルは太陽電池セル(シリコンやガリウムヒ素)を板状の展開パネルに多数貼り付けたものである。最近の衛星は大型化しているので、10キロワットもの発電能力を有するものもある。太陽電池パドルは宇宙放射線(重粒子やγ線)や厳しい温度サイクルにさらされるため(地球周回衛星では零下80度から80度の温度サイクルに年間5000回程度)、厳しい環境試験に合格しなければならない。衛星搭載用のバッテリーは大容量で放電深度が大きく、かつ軽量でなくてはならない。人工衛星に使用されるバッテリーはニッケルカドミウムが最初に実用化され、その後ニッケル水素、リチウムイオンと進化してエネルギー密度、長寿命化が進められている。
 人工衛星がおかれる熱環境に対して、輻射(ふくしゃ)または伝導で熱を移動させて搭載機器を許容温度内に維持するのが熱制御系である。熱制御系には多層断熱材のように材料の特性で熱の出入りを調節するものと、ヒーター、サーマルルーバー、ヒートパイプのように自ら能動的に作動して熱収支を調節するものが組み合わせて使われる。
 構体系はロケット打上げ時の厳しい荷重、振動に耐えて衛星形状を保持し、搭載機器への負荷を抑えるために、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のパネル支持型やトラス構造型が使われる。
 推進系は人工衛星の姿勢制御や軌道変換などで重要な機器である。個体式(火薬)、液体式(ヒドラジン)、電気式(イオンエンジン)などがあり、人工衛星のミッションによって使いわける。
 姿勢・軌道制御系は打上げ直後に決められた軌道と姿勢を確立する。姿勢を検出するものには太陽センサー、地球センサー、恒星センサーなどがあり、これらの信号で姿勢を計算してアクチュエーターで姿勢を変える。このような作業は地上との連携で行われ、そのために人工衛星の動作環境を把握し、指令を送るテレメトリー・コマンド系が共通機器としてかならず搭載される。
 人工衛星に搭載される機器や人工衛星本体は、打上げ時の厳しい環境条件(振動・衝撃・音響)に耐え、また宇宙空間における過酷な環境(高真空・温度サイクル)に耐えて、修理なしに5年から10年もの間、故障なく機能し続けなければならない。そのためには、機器を構成する部品の一つ一つについて、必要な信頼性を確保するとともに、衛星の開発フェーズに応じた環境試験と品質・信頼性管理が重要である。[森山 隆]

人工衛星の利用動向

これまで世界各国で6000機を超えるさまざまな目的の人工衛星が打ち上げられているが、回収されたものや落下したものなどがあるため、2010年時点で地球の周回軌道にある人工衛星の数は約3000機、そのうち赤道上空約3万6000キロメートルの静止軌道にある人工衛星は2010年時点で800機を超える。世界の人工衛星打上げの実績では、2000年から2009年までの10年間に931機(年間平均90機)が打ち上げられ、アメリカ317機(34%)、ロシア・ウクライナ201機(22%)、ヨーロッパ150機(16%)、中国66機(7%)、日本61機(6%)、その他136機(14%)となっている。これらのうち商業打上げは年間20機(約20%)程度であり、その大部分は通信・放送衛星、次いで測位・地球観測衛星となっている。商業衛星打上げなど世界の宇宙産業は、年平均7%程度成長しており、宇宙の商業利用が進んでいる。政府系衛星は70%を占め、安全保障(偵察衛星)や気象衛星(静止衛星と軌道周回衛星)である。
 通信・放送衛星は衛星産業の重要な事業基盤であり、たとえばヨーロッパでは衛星産業の売上高の4割(2009年)を占めている。通信・放送衛星はほとんどが静止衛星であり、多数の中継器を搭載し、長寿命(10~15年)でなければならない。そのため衛星バス(構体や共通機器)の標準化による短期間・低価格での開発や高効率で省電力化が可能な通信中継器、移動体通信に必要な大型展開アンテナなどの開発が行われている。世界の商業通信衛星のシェアは、アメリカ(4社)で60%、ヨーロッパ(2社)で30%、ロシア(3社)で10%のシェアをもち、ロシアは独自のモルニア軌道(高緯度をカバー)の通信衛星を静止衛星と組み合わせて国内サービスを実施している。このほか中国やインドも技術開発を進めている。日本は技術試験衛星「きく8号」(2006年打上げ)や超高速インターネット衛星「きずな」(2008年打上げ)により次世代の移動体通信や大容量通信などの技術習得を行い、商業衛星の獲得を目ざしている。
 測位衛星は、自動車のカーナビゲーション・システムやモバイル端末を利用した位置情報の取得、航空機のナビゲーションなどに不可欠な人工衛星である。アメリカは世界で最初に測位衛星GPSを開発し、軍事目的のGPS衛星30機を運用している。精度を落とした民政用GPS信号を無償で利用できるように全世界に公開している。日本は100%その恩恵にあずかっており、2010年(平成22)にはGPSを補完することで測位精度を1メートル以下にまで向上する準天頂衛星「みちびき」を打ち上げ、さまざまな実証実験を実施している。ヨーロッパはGPSへの過度の依存への警戒から、測位衛星群「ガリレオ」を商業ベースで2015年までに30機打ち上げる計画を進めている。ロシアは測位衛星群「グロナス」の24機体制の構築を進めている(2011年時点で21機が運用されている)。中国は軍事目的で静止、極周回、準天頂を組み合わせた35機の宇宙測位システムの構築を進めている。これまで9機が打ち上げられ、2020年には35機体制が完了する予定になっている。インドは地域航法衛星システム(2014年に静止と周回の7機体制)を目ざしている。日本は独自の周回測位衛星をもつ計画はなく、GPSを補完する準天頂衛星の後継機の計画を検討している。
 地球観測衛星は、地球の気象や地表の詳細な情報を繰り返し収集する人工衛星で、1960年代にアメリカによるランドサット(1975年まではアーツとよばれていた)計画に始まる。また気象観測もほぼ同時期から開始され、地球の気候変動の予測や気象情報の収集に不可欠な人工衛星となっている。国際協力の協定により、日本、アメリカ、ヨーロッパと中国が協力して気象の継続的観測を行っており、そのデータは誰でも利用することができる。韓国とインドも独自の静止気象衛星の開発を進めている。なお、スピン安定型の人工衛星で始まった静止気象衛星は現在はほとんど姿を消し、三軸安定の衛星バスに高性能カメラを搭載し、250メートル以上の地表分解能を実現している(これまでは1キロメートルが主流であった)。また、観測エリア内の1000キロメートル四方を1分程度の時間で観測する機能をもつ衛星もある。
 地球観測はセンサーの性能が飛躍的に向上し、これまで偵察衛星など限定的な軍事利用に限られていたが、アメリカが50センチメートルの解像度の光学画像の商業配布を認めてから、詳細な地図作成、土地利用状況把握などの商業利用や災害状況把握などに盛んに利用されている。そのなかでも合成開口レーダー(SAR)のセンサー技術や画像処理技術が進歩し、夜間、全天候での情報収集やインターフェロメトリという干渉処理を行うことで、3次元での地表面変動の解析などにも利用が広がっている。地球観測衛星は通常は太陽同期極軌道という北極と南極を結ぶ500~1000キロメートルの高さの軌道に投入され、1周約90分程度で周回し、地球の自転を利用して全球を繰り返し観測する。
 アメリカとロシア(旧ソ連)は1960年代から、偵察衛星を中心に地球観測の技術開発と利用を進めてきた。日本は1987年(昭和62)に海洋観測衛星「もも1号」を打ち上げ、2011年(平成23)までに9機の地球観測衛星を打ち上げている。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)は商業利用と気象・環境ミッションを中心に、中国は偵察、資源探査、地図作成などを中心に、インドは旧ソ連の技術移転を受けて地表面探査などに地球観測衛星を利用している。アジアの近隣国では、欧米から地球観測衛星を調達したり、小型衛星を開発するなど独自の地球観測を進めている。地球観測衛星は先進国だけのものではなくなってきている。
 科学衛星は地球大気や電離層、プラズマ(電離によって生ずる荷電粒子を含む気体)などの観測を行うミッション、月の探査や太陽と太陽系惑星の探査を行うミッション、可視光や赤外線、X線、γ線、ミリ波などで天体観測や深宇宙探査を行うミッションがある。日本はこれまで32機の科学衛星を地球周回軌道や惑星間空間に送り出し(2010年時点)、世界の科学衛星ミッションをリードする多くの成果をあげてきた。「はやぶさ」は小惑星イトカワのサンプルリターン探査で世界の注目を浴びた。「かぐや」は月周回軌道から表面の元素組成や地下構造の探査などで活躍した。宇宙探査分野の日本の競争力は、世界第3位といわれる。
 アメリカは国の威信をかけたアポロ計画(1961~1972年)で、全6回の月面着陸を成功させ、有人による世界初の月面探査を行った。また太陽系のすべての惑星の探査や、彗星(すいせい)や小惑星探査も数多く実施してきた。ハッブル宇宙望遠鏡は、地球上空600キロメートルを周回する巨大な(口径2.4メートル、長さ13.1メートル、重量11トン)宇宙望遠鏡で、地球大気や天気に左右されずに深宇宙の天体観測が行われる。ロシアは旧ソ連時代に火星、金星探査を行い、ソ連崩壊後は宇宙科学ミッションは一時縮退したが、ふたたび月、火星探査に意欲をみせている。ヨーロッパは月、火星、金星などの無人探査機の打上げや、アメリカと協力して土星探査なども実施している。中国は2007年に初の月周回衛星を打ち上げ、その後2010年には高性能のステレオカメラを搭載した月周回衛星を打ち上げている。今後は中国初の月面着陸や火星探査が計画されている。インドは無人の月周回衛星を2008年に打ち上げ、今後は火星探査を独自に行う計画をもっている。[森山 隆]
『永井裕著『衛星通信――生活を変える新しい通信メディア』(1989・電気書院) ▽冨田信之著『宇宙システム入門――ロケット・人工衛星の運動』(1993・東京大学出版会) ▽茂原正道著『宇宙工学入門――衛星とロケットの誘導・制御』(1994・培風館) ▽井口洋夫監修、岡田益吉・朽津耕三・小林俊一編『宇宙環境利用のサイエンス』(2000・裳華房) ▽宇宙開発事業団監修、小林繁夫著『宇宙工学概論』(2001・丸善) ▽木田隆・小松敬治・川口淳一郎著『宇宙工学シリーズ3 人工衛星と宇宙探査機』(2001・コロナ社) ▽茂原正道・鳥山芳夫編『衛星設計入門』(2002・培風館) ▽坂田俊文著『宇宙考古学――人工衛星で探る遺跡と古環境』(2002・丸善) ▽大林成行編著『人工衛星から得られる地球観測データの使い方』(2002・日本建設情報総合センター、大成出版社発売) ▽坂井丈泰著『GPS技術入門』(2003・東京電機大学出版局) ▽日本リモートセンシング研究会編『図解リモートセンシング』改訂2版(2004・日本測量協会) ▽狼嘉彰他著『宇宙ステーション入門』第2版(2008・東京大学出版会) ▽岡本謙一監修、川田剛之・熊谷博・五十嵐保・浦塚清峰著『宇宙工学シリーズ9 宇宙からのリモートセンシング』(2009・コロナ社) ▽岩崎信夫・的川泰宣著、宇宙航空研究開発機構監修『図説 宇宙工学』(2010・日経印刷)』

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世界大百科事典内の人工衛星の言及

【打上げ軌道】より

…人工衛星を目的の最終軌道(衛星軌道orbit)に投入するまでの軌道。人工衛星として半永久的に地球を周回するためには,衛星をある程度以上(通常200km以上)の高度に運搬し,さらにある速度以上(例えば高度200kmであれば約7.8km/s以上)に加速しなければならないが,この過程が打上げ軌道である。…

【宇宙開発】より

… しかし,英語では宇宙開発の英訳であるspace developmentが使用されることはきわめて少なく,space exploitation(宇宙利用)というのがふつうである。 宇宙開発は,本来の意味からすると人間の宇宙空間および天体の利用であるが,これまでの経過をふりかえると,そのための技術の開発,すなわち人工衛星とロケットの開発と解釈される傾向があり,一般にはとくに両者を区別することなく,人間の宇宙への進出の活動全体を宇宙開発と解釈しているようである。宇宙飛行人工衛星ロケット
【宇宙への進出】
 宇宙開発が大きな課題として認識されるようになったのは,1957年に始まった国際地球観測年を契機としてであり,ここにおいて全世界的な事業として宇宙空間の観測を主とするこの分野の研究が取り上げられた。…

【宇宙環境】より

…宇宙環境という場合,そこに含まれる範囲は非常に広くかつ多岐にわたるが,ここでは宇宙開発に関連して,人工衛星や宇宙船が受ける環境に焦点を絞って説明する。
[人工衛星と宇宙環境]
 地球を周回する人工衛星では大気の密度が重要な要素である。…

【ケプラー運動】より

…他の惑星についても同様である。地球のまわりの人工衛星の運動の場合には,2天体(地球と人工衛星)間の距離は地球の大きさと同じくらいである。それでも,地球がほとんど球形であるために地球を質点とみなすことができる。…

【原子力衛星】より

…原子力を動力源とする人工衛星で,原子炉を搭載したいわゆる原子炉衛星と,放射性同位体(RI)を搭載したものとの2種類がある。原子炉衛星の場合,原子炉燃料の核分裂による熱は,液体金属を作動流体とする蒸気タービンサイクル,あるいは熱電直接変換機thermo‐electric converter(略称TEC)によって電力に変えられる。…

【人工天体】より

…人工的に打ち上げられた地球周回の衛星や他天体の孫衛星,惑星間探査機の総称。通例,地球周回の衛星は単に人工衛星といい,その他の惑星間探査機を人工天体,あるいは人工惑星artificial planetと呼ぶことが多い。地球表面においては約11.2km/s以上の速さ(第二宇宙速度)で打ち出すと,その軌道は地球周回軌道とはならず,地球を脱出する軌道となる。…

※「人工衛星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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