改訂新版 世界大百科事典 「プラスチック系複合材料」の意味・わかりやすい解説
プラスチック系複合材料 (プラスチックけいふくごうざいりょう)
連続相を形成する相がプラスチックまたはプラスチック状になっている複合材料。代表例は,繊維強化プラスチックfiber reinforced plastics(FRPと略称)で,ガラス繊維の長繊維,織布,短繊維等を不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で固めたガラス繊維強化熱硬化性プラスチックglass fiber reinforced plastics(GFRPと略称),同様にカーボン繊維を使った炭素繊維強化熱硬化性プラスチックcarbon fiber reinforced plastics(CFRPと略称)で,ともに比弾性率(弾性率/密度)や比強度(強度/密度)が高いことを利用して,軽量,高強度,高剛性が要求される宇宙航空材料,スポーツ用品等に幅広く普及しつつある。一方,マトリックス樹脂がポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の場合は,おもに短繊維状のガラス繊維や炭素繊維を用いて射出成形し,これを繊維強化熱可塑性プラスチックfiber reinforced thermoplastics(FRTPと略称)と呼び,おもに機械部品等に金属代替として使用されつつある。さらに,カーボンブラックや炭酸カルシウム,磁性粉末等を分散させたプラスチックを粒子充てんプラスチックparticulate filled plastics(PFPと略称)と呼び,導電性,低燃焼エネルギー,電磁波吸収等の特殊目的のために開発されている。これ以外に,高分子どうしの組合せであるポリマーアロイのうち,マトリックスがプラスチック状であるものとして,プラスチックにゴム状高分子をブレンドまたはグラフト重合させた系もプラスチック系複合材料として数多い。代表例は,耐衝撃性樹脂のABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体),HIPS(高衝撃性ポリスチレンhigh impact polystyrene)等で,それぞれアクリロニトリル・スチレン樹脂,ポリスチレン樹脂のマトリックス中に,微細なゴム状粒子となるポリブタジエン等がブレンドまたはグラフト重合されている。このような多成分多相系のプラスチック系複合材料は,各種用途に対応して今後も増大する傾向にある。
→強化プラスチック
執筆者:西 敏夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報