ABS(読み)えーびーえす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ABS」の意味・わかりやすい解説

ABS
えーびーえす

ブレーキの安全装置。滑りやすい路面での確実な制動が得られるようにする機能で、アンチロック・ブレーキシステムanti-lock brake systemの略称である。元々はABSの略称はドイツ語のAntiblockiersystemが語源である。

 雪道や雨にぬれた舗装道路、砂利道など滑りやすい路面で強くブレーキをかけると、路面の摩擦係数が低いことからタイヤはロック(回転を停止)してしまう。ロックしたタイヤは路面を滑走するためハンドル操作がきかなくなるほか、制動距離も長くなる。また、左右のタイヤのうち、一方が滑りやすい路面、もう一方が滑りにくい路面にあるなど、左右輪の路面状態が異なっているときに急ブレーキをかけると、左右輪の摩擦係数が異なるため、車の挙動が不安定になってスピンしてしまう。

 どちらの状態も重大な事故につながる危険なものである。こうした事態を回避するため、タイヤの路面へのグリップを可能にし、安全確実に停止できるようにしたシステムがABSである。滑りやすい路面でタイヤが空転するなどによって四輪の回転差が一定以上になると、運転者がブレーキペダルを踏んだままでも、自動的にブレーキ液圧を調整し、一瞬ブレーキを緩めたり段階的にきかせたりすることで機能する。電子制御技術の向上によって、さらにきめ細かい制御が可能になり、安全性が高まっている。小型・大型自動車だけでなく、二輪車用のABSも開発されている。鉄道車両用が先に開発され、航空機自動車にも応用されるようになった。

[伊東和彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ABS」の意味・わかりやすい解説

ABS
エービーエス
alkyl-benzene sodium sulfonate

化学式 RC6H4SO3Na 。初期の家庭用合成洗剤の主成分自然界で分解しにくく,かつては河川が埋まるほどに泡立つ光景もみられた。下水道の好気性処理を 20ppm程度で阻害し,また水道水にまで影響が出たため使われなくなった。 LASとともに陰イオン界面活性剤の一種。 (→界面活性剤 , 洗剤汚染 )

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