プロダクトサイクル理論(読み)プロダクトサイクルりろん(その他表記)product cycle theory

改訂新版 世界大百科事典 「プロダクトサイクル理論」の意味・わかりやすい解説

プロダクト・サイクル理論 (プロダクトサイクルりろん)
product cycle theory

アメリカの政治経済学者バーノンRaymond Vernon(1913-99)が唱えた個別商品にかかわる動態的国際分業理論。バーノンは,商品が生物と同様に出生から成長を経て成熟し,やがては衰退するというライフ・サイクルをもつことに注目し,国際分業のパターンがそれらの諸局面を通じてどのように変化するかを論じた。商品の生成期には,研究開発,さらには企業化が必要不可欠であり,また単価がかさむため,資本が豊富で技術力にすぐれた諸国で生み出され,所得水準の高い先進諸国に輸出される。成長期になると,新規参入企業が増加し,企業間競争が激化することから,アフター・サービス,市場調査などを支える広い意味での人的資本に恵まれた先進諸国が輸入代替,あるいは輸出拡大に成功する。成熟期,衰退期には,商品は広範に普及し,品質や製法などの標準化が進むため,新規の投資資金や未熟練労働など一般的な生産要素の利用可能性が国際分業の決定要因となる。この時期には,直接投資,ライセンス契約などを通じて商品の生産技術が国際的に伝播し,労働が豊富で賃金の低い発展途上諸国に比較優位が移行するというのがこの理論の内容である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のプロダクトサイクル理論の言及

【多国籍企業】より


[背景]
 すでに第2次大戦以前からアメリカやヨーロッパの企業は中南米やアフリカ,中近東でプランテーション農業,金属鉱山,原油等の資源開発と世界規模でマーケティングを行ってきた。しかし1950年代以降,製造業分野でのアメリカ企業の多国籍企業活動が活発化したが,これはプロダクト・サイクル理論で説明される。つまり第2次大戦後,新商品・新技術の開発や企業化の多くはアメリカで行われた。…

※「プロダクトサイクル理論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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