日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベスター」の意味・わかりやすい解説
ベスター
べすたー
Alfred Bester
(1913―1987)
アメリカのSF作家。この分野のライターとしては珍しい寡作家で現在までに長編4冊、短編集5冊しかないが、その長編処女作『分解された男』は1950年代のSF界に文字どおり爆発的な衝撃を与え、その波紋は60年代のニュー・ウェーブ運動へと続いている。本書のテーマは、ともに特異能力をもつ警察官と犯人が死闘を演じる24世紀のマンハント劇だが、文体、語法、構成の点で瞠目(どうもく)すべき独創性をもち、SF史上の画期的作品として1953年、第1回ヒューゴー賞を受賞した。次の作品『虎(とら)よ、虎よ!』(1956)も前作に劣らぬ力作で、古風な復讐(ふくしゅう)劇を前衛的技巧で処理してみごとな効果をあげている。ほかに『コンピューター・コネクション』(1975)、短編集『ピー・アイ・マン』(1964)など。
[厚木 淳]
『中田耕治訳『虎よ、虎よ!』(ハヤカワ文庫)』