日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ベンゾイルフェニル尿素殺虫剤
べんぞいるふぇにるにょうそさっちゅうざい
殺虫剤を化学構造に基づいて区分したときの分類の一つ。ベンゾイルフェニル尿素殺虫剤は、フェニル尿素がベンゾイル化(アシル化の一種)された基本構造を有し、昆虫に特有な成育過程を阻害する殺虫剤の総称である。
昆虫の表皮の主成分は、N-アセチル-D-グルコサミンがβ(ベータ)-1→4結合(一方の化合物の1番目の炭素と他方の化合物の4番目の炭素のところで結合)した重合体(キチン)であり、昆虫は、脱皮・変態するときに古い表皮を分解し、新しい表皮を合成する。ベンゾイルフェニル尿素殺虫剤の殺虫作用は、昆虫の脱皮・変態時にキチン合成酵素の基質であるUDP-N-アセチル-D-グルコサミンの輸送を阻害することに起因する。
ベンゾイルフェニル尿素殺虫剤は、幼虫に対しては経口からの摂取で効力を発揮する食毒剤であるが、成虫に対しては食毒作用を示さず、産卵後の孵化(ふか)を抑制する効果を示す。哺乳(ほにゅう)動物には低毒性であるが、甲殻類にはその表皮がキチンを主成分とするため脱皮・変態に影響を及ぼす。
[田村廣人]