日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンディクセン」の意味・わかりやすい解説
ベンディクセン
べんでぃくせん
Friedrich Bendixen
(1864―1920)
ドイツの経済学者、銀行家。ハイデルベルク大学、ライプツィヒ大学に学び、1895年ハンブルクの不動産銀行の頭取(とうどり)となり、生涯その職にあった。経済学上、彼のもっとも大きな貢献は、名目的な貨幣本質論の先駆となる指図証券説を唱えたことである。この考え方は、G・F・クナップの貨幣国定説が貨幣理論を法制的にとらえようとしたのに対して、同じ立場にたちつつも、経済理論、貨幣経済論として展開したことに特徴がある。ベンディクセンによれば、貨幣は先行給付に対する反対給付の「指図証」であり、抽象的ではあるが価値を測定する機能をもつとし、その基礎に国家の権威を据えた。したがって給付と反対給付が均衡していれば貨幣の価値は保たれることとなり、貨幣価値は名目的なもので説明される。主著は『貨幣の本質』Das Wesen des Geldes(1908)、『貨幣と資本』Geld und Kapital(1912)などであるが、そのほか第一次世界大戦中の貨幣政策を扱った著書もある。
[原 司郎]