…1170年代に《ランスロまたは荷車の騎士》(マリー・ド・シャンパーニュに献じたもの。結尾部は別の詩人の作),《イバンまたは獅子の騎士》を書いてアーサー王物語の創始者の位置を確立した後,フランドル伯フィリップに与えられた種本に拠り,素朴な若い騎士ペルスバルがふしぎな城で神秘的試練に遭う《ペルスバルまたは聖杯物語》に着手した。これは,それまでの人間的な愛の主題から,晦冥な宗教主題の深層への重大な踏込みという注目すべき試みであったが,9000余行を費やしてなお未完のまま,おそらく作者の死により中断された。…
…12世紀末ヨーロッパで顕在化したキリスト教の色濃い伝説だが,起源には諸説あり,ケルト説話を源とする考えが有力。聖杯Graal(英語はGrail)を扱った最初の作品はフランスの詩人クレティアン・ド・トロアの《ペルスバルまたは聖杯物語》(1185ころ)。主人公が漁夫王の城で目にしたふしぎな行列,血の滴る槍と光り輝く聖杯について,心に抱いた質問を口に出さなかった失敗がすべての発端であった。…
※「ペルスバルまたは聖杯物語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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