日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボアブディル」の意味・わかりやすい解説
ボアブディル
ぼあぶでぃる
Boabdil
(?―1518?)
アル・アンダルス(イスラム教スペイン)のナスル朝グラナダの最後の王(在位1482~92)。ボアブディルはキリスト教徒がつけたあだ名で、正しくはアブ・アブド・アラー・ムハンマド11世Abu 'Abdullah Muhammad Ⅺ。キリスト教徒軍の攻勢を阻止しえない父王への不満に駆られた国内勢力に担がれて即位したが、翌年ルセーナの戦いで捕虜となり、カトリック王フェルナンド2世に臣従を誓うコルドバ条約の調印を強いられた。以後、ボアブディルは国内の反対勢力を討つに際してフェルナンド2世からの支援を得た。こうしてボアブディルはフェルナンド2世にとってはグラナダ征服戦遂行のための格好な道具と化した。事実、敵対する叔父がアフリカに去ると、ボアブディルに残されたのはグラナダ一市のみであった。彼は1492年1月にアルハンブラ城をカトリック両王に明け渡し、翌年モロッコのフェズの支配者のもとに身を寄せた。
[小林一宏]