ボブ・マーリィ(読み)ぼぶまーりぃ(その他表記)Bob Marley

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボブ・マーリィ」の意味・わかりやすい解説

ボブ・マーリィ
ぼぶまーりぃ
Bob Marley
(1945―1981)

ジャマイカレゲエ歌手。本名ロバート・ネスタ・マーリィ。ジャマイカ北部の村に生まれ、10代で首都のキングストンに出てトレンチタウンに居住する。1960年代初頭から音楽活動を開始し、やがてジャマイカ音楽界に台頭するようになった。精神的背景には、精霊信仰を中心としたジャマイカの伝統文化とラスタファリ運動があり、シンガーソングライターとして彼が発信するメッセージ性の強い音楽は、不正にあえぐ下層社会に住む人々の心情を代弁し、自立した生き方を鼓舞するものであった。サウンドとしては、力強く波打つようなリズム・セクションの上に、彼の絞り出すようなボーカルとバックコーラスがからむ構成をとる。73年に発売された『キャッチ・ア・ファイアー』は、ボブ・マーリィ・アンド・ザ・ウェイラーズの存在ばかりではなく、それまではジャマイカのローカルなジャンルであったレゲエを世界に知らしめる記念碑的なアルバムとなった。その後次々に発表、展開されるアルバムおよびライブは、技術的な事柄に傾きがちであった70年代ロックにも衝撃を与え、いずれも熱狂的に迎えられた。また、エリック・クラプトンEric Clapton(1945― )をはじめとする世界的なミュージシャンにも多大な影響を与えた。代表的な曲、歌唱に「コンクリート・ジャングル」「ゲット・アップ・スタンド・アップ」「ノー・ウーマン・ノー・クライ」などがある。黒色腫のためわずか36歳で没したが、音楽的・精神的影響力を今日もなおもち続けている。

[田井竜一]

『スティーブン・ディヴィス著、大橋悦子訳『ボブ・マーリー』(1986・晶文社)』『T・ホワイト著、青木誠訳『ボブ・マーリィ――キャッチ・ア・ファイア』(1992・音楽之友社)』『M・L・ウィットニー、D・ハッシー著、山本安見訳『レゲエ王国――聖地ジャマイカとボブ・マーリィ』(1995・大栄出版)』『I・マッカン編、山本緑・山本安見訳『ボブ・マーリイ語録集』(1995・アップリンク=河出書房新社)』『マーシャ・ブロンソン著、五味悦子訳『ボブ・マーリー』(1999・偕成社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android