改訂新版 世界大百科事典 「黒色腫」の意味・わかりやすい解説
黒色腫 (こくしょくしゅ)
melanoma
メラノマともいう。皮膚,粘膜,眼球脈絡膜などの色素細胞やほくろから生ずる黒色の悪性腫瘍で,正式には悪性黒色腫malignant melanomaという。皮膚癌の一つ。白色人種に多く黒色人種には少ない。日本の発生率は人口10万人当り1~2人程度。全身どこにでもみられるが,日本人では下肢,とくに足底に多い。色は黒色,赤黒色あるいは褐色で,多くは半球状に隆起し,一部が潰瘍化したり,表面から出血しやすいこともある。腫瘍の周囲に褐色,黒色など濃淡のある色素が不規則に,にじみ出したようにみえるのが特徴である。短期間に大きくなったり,出血しやすいほくろや,足の裏の色の濃い色素斑は注意を要する。外傷などの機械的刺激や紫外線の照射が誘因となることもある。きわめて悪性で転移しやすい。予後は原発巣の深さと転移の有無により異なるが,5年生存率は,転移のない場合で73%,所属リンパ節にまで転移のある場合24%,遠隔転移のある場合には5%以下となっている。治療は原則として広範囲にまわりの皮膚を含めて切除し,同時に所属リンパ節をも切除する。手術不可能な場合には,放射線の照射や化学療法,免疫療法などを行うが,これらの治療法はあまり有効でない。黒色腫はきわめて予後の悪いものであるが,早期に発見し,はじめに適切な外科的切除を行えば完治する。
執筆者:新村 真人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報