ボラジン

化学辞典 第2版 「ボラジン」の解説

ボラジン
ボラジン
borazine

B3H6N3(80.50)の慣用名IUPAC命名法による体系名は,シクロトリボラザン(cyclotriborazane).略称ボラザン.ベンゼンC6H6と等電子構造であることから無機ベンゼンともいわれる.ボラゾールともよばれるが,正しい名称ではない.製法には,
(1)NH3とB2H6とからH3N・BH3をつくり,これを140~160 ℃ に加熱する,
(2)(NH4)2SO4とNaBH4との混合物を120~140 ℃ で反応させる,
(3)BCl3とNH4Clの反応でCl3B3N3H3をつくり,これにNaBH4を反応させる,
など,いくつかの方法がある.NとBが交互に結合した,ほぼ平面の正六角形型のB3N3環(図(a))をもち,HはB,Nに1原子ずつ結合している.B-N1.435 Å,B-H1.26 Å,N-H1.05 Å.∠B-N-B121°,∠N-B-N118°.無色,流動性の液体.融点-58 ℃,沸点53 ℃.引火性が高い.密度0.842 g cm-3(20 ℃).ベンゼンに似て,非局在π結合性があり,安定で芳香性も認められる.たとえば,Hをハロゲン炭化水素基などに置換した化合物が多数得られている.η6-B3N3R6・Cr(CO)3(R = CH3その他)のようなπ錯体も生成する.共役二重結合をもつ (BN)n 型環状化合物は,図(b),(c)のようなn = 2,4のものも得られている.一方,B,Nの極性のため,ベンゼンよりは反応性が大きい.たとえば,HX(X=ハロゲン,OH,ORなど)を付加し,

B3N3H6 + 3HX = (H2NBHX)3

などの反応が起こり,水素化すれば,シクロヘキサンに相当するB3H12N3が得られる.水とは室温では反応が遅いが,煮沸すると H2 を発生して [B(OH)(NH)]3 を生成する.ボラジンを真空中で約70 ℃ に加熱すると,THFなど極性溶媒に可溶な白色の橋かけ構造をもつ鎖状ポリマーpoly(borazylene)(図(d))が得られる.さらにこれを高温に加熱すると純粋な窒化ホウ素BNが得られる.[CAS 6589-51-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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