日本大百科全書(ニッポニカ) 「シクロヘキサン」の意味・わかりやすい解説
シクロヘキサン
しくろへきさん
cyclohexane
もっとも代表的なシクロアルカンの一つ。ヘキサメチレン、ヘキサヒドロベンゼンともよばれる。無色可燃性の液体。ベンジンのにおいをもつ。ナフサ中のメチルペンタンを異性化させると生成する。高純度のシクロヘキサンはニッケルを触媒として高温・加圧下、ベンゼンを水素添加して製造する。シクロヘキサンの構造は平面正六角形でなく、炭素間の結合角のひずみ、ねじれのひずみ、水素間のファン・デル・ワールス力によるひずみの総計が最小である椅子(いす)形配座をとる。シクロヘキサンを液相空気酸化すると、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンが生成する。またシクロヘキサン中で塩化ニトロシルを光照射すると、シクロヘキサノンのオキシムが生ずる。これからカプロラクタムを導きナイロンが製造される。シクロヘキサンの工業的用途の9割までがナイロンの製造にあてられる。ほかに油脂抽出、樹脂、塗料など溶媒としての用途がある。
[向井利夫]