ポステル(その他表記)Guillaume Postel

改訂新版 世界大百科事典 「ポステル」の意味・わかりやすい解説

ポステル
Guillaume Postel
生没年:1510-81

フランスの東洋学者,神秘思想家。苦学しつつギリシアラテンヘブライアラビア等の諸言語を習得。1535年トルコやシリアに旅行し見聞を広めて帰国。国王重臣庇護を得て38年に王立教授団(コレージュ・ド・フランスの前身)に登用され,ギリシア,ヘブライ,アラビア各語を教授した。42年国王の不興を買って失職し,以後20年近くヨーロッパ,近東各地を放浪,62年帰国するや直ちに異端の疑いで逮捕され,死に至るまでパリの一修道院に軟禁された。その著作は《コーラン研究》(1543),《世界和合論》(1544)をはじめとして世界地誌,イスラム文化,天文,政治,語学など多領域にわたっている。フランス人として初めて非キリスト教文化の存在とその重味を鋭く意識し,諸宗教の合一やフランス王制を核とする世界平和の実現を夢見た彼の思想は,独自の神秘主義的な言説も災いして,新旧キリスト教の対立抗争に明け暮れる同時代人の理解の範囲を超えたことから,しばしば狂人扱いをされた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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