ポスト・マルコス(読み)ぽすとまるこす

知恵蔵 「ポスト・マルコス」の解説

ポスト・マルコス

1986年の2月革命(ピープルパワー革命ないしエドサ革命)で成立したアキノ政権は、暴力によらず、国際世論と連携しての示威行動で都市中間層が独裁体制を打倒した政治変動のモデルの1つとなった。しかし、アキノ政権は「反マルコス」を共通項とした寄り合い所帯で、発足直後から旧マルコス派や国軍改革派(RAM)などによる再三のクーデター未遂事件によって不安定な政権運営を余儀なくされた。結局、民主主義諸制度の回復以外さしたる成果を上げることなく任期を終えた。92年の大統領選でわずか24%弱の得票率で当選したフィデル・ラモスは、経済エリートによる寡占・独占を打破するための規制緩和に力を注ぎ、外資の積極的な誘致に取り組んだ。その結果、マルコス政権期後半から長く低迷してきた経済も94年頃から回復に転じた。治安面では四半世紀に及ぶミンダナオ島でのイスラム教徒の分離独立運動に一応の決着をつけるなど成果を上げた。外交面では、在比米軍の撤退後、米国との「特殊な関係」が解消したこともあり、自らをASEAN一員として近隣外交を推進した。

(片山裕 神戸大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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