日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポーウェル」の意味・わかりやすい解説
ポーウェル
ぽーうぇる
Louis Pauwels
(1920―1997)
フランスのジャーナリスト。パリの生まれ。対独抵抗運動に加わり、ナチの収容所に移送されるが生き延び、第二次世界大戦後早くから大衆文化活動をおこして女性月刊誌『マリー・フランス』Marie-Franceの編集主幹となる。一方『聖凡人』Saint Quelqu'un(1946)、『おぞましい恋』l'Amour monstre(1955)など、幻想と神秘とエロスの色濃い小説を発表。化学者でもある経験を生かしつつ、物理学者でSF作家のジャック・ベルジエJacques Bergier(1912―78)との共著『魔術師の朝』Le matin des magiciens(1960。邦訳『神秘学大全』)で科学とSFと神秘主義の境界にまたがる世界を掘り起こし、その考えにたつ雑誌『プラネット』Planèteをベルジエと編集刊行して、1960年代のSF、幻想文学に大きな影響を与えた。しかし、1968年五月革命以後はその影響力も衰え、一時ジャーナリズムから遠ざかったが、77年『フィガロ』紙文化部門の主筆として再登場、政治的には保守の立場にたちつつ、現代の大衆文化のなかでメディアに流される若者批判などを展開した。スキャンダラスな発言癖もあってときに話題をよんだが、もはや60年代の深いインパクトは望むべくもなかった。
[小林 茂]
『ルイ・ポーウェル、ジャック・ベルジエ著、日夏響訳『宇宙の神秘』(1976・大陸書房)』▽『ポーウェル著、高橋純訳『超人の午餐』(1986・工作舎)』▽『ギイ・ブルトン、ルイ・ポーウェル著、有田忠郎訳『西洋歴史奇譚』新装版(1997・白水社)』▽『ルイ・ポーウェル、ジャック・ベルジェ著、伊東守男編訳『神秘学大全――魔術師が未来の扉を開く』(学研M文庫)』