日本大百科全書(ニッポニカ) 「まさかり」の意味・わかりやすい解説
まさかり
まさかり / 鉞
大きな木を伐(き)るのに用いる刃物の一種。古くは鈇鉞(ふえつ)といい、斧(おの)に似ていて、さらに大形のもので、木製の長い柄(え)に鉄製の刃がついており、斧より刃口が広いので、「はびろ」ともよばれていた。まさかりは、古代以来、武器や刑具として用いられ、武家のなかには、これをかたどって家紋としたものもあった。近世には、もっぱら木材の伐採に使用され、近年まで山仕事の道具として使われていた。木こりの仕事始めの日をマサカリダテといい、東北地方などでは、山の神を祭って酒宴をする。また青森県八戸(はちのへ)市付近では、正月14日の晩に、まさかりで地を突き、家の周囲を巡るマサカリヅキの習俗などもある。このほか、やはり正月の予祝行事として有名な奥三河の花祭では、鬼が大きなまさかりを持って登場し、神楽(かぐら)を舞い、まさかりを打ち合って、祓(はら)い清めを行う。
[宮本瑞夫]