改訂新版 世界大百科事典 「マザー家」の意味・わかりやすい解説
マザー家 (マザーけ)
アメリカ,ニューイングランド植民地の代表的聖職者の家系。親子孫3代のマザーは,いずれもマサチューセッツ湾植民地のピューリタン体制の擁護に全力を傾け,頑迷な保守派とみなされるが,宗教上のみでなく知的にも多大の遺産を残した。初代のリチャードRichard Mather(1596-1669)は1635年イギリスから移住し,会衆派教会の基礎を築くのに貢献した。2代目のインクリースIncrease M.(1639-1723)は,ボストンで牧師として説教に生涯をささげたが,ハーバード大学の学長や対本国交渉の植民地代表を務めるなど広く活躍した。3代目のコットンCotton M.(1663-1728)は強い自負心に比して,時代の推移により影響力の低下は否めなかった。しかし植民地随一の学識を有し,数百冊の著述を刊行し,《アメリカにおけるキリストの偉大な御わざ》(1702)は歴史書として高い評価を得,自然科学や医学の著作は,彼の関心の新しさを示している。
執筆者:大下 尚一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報