日本大百科全書(ニッポニカ) 「マシコフ」の意味・わかりやすい解説
マシコフ
ましこふ
Илья Иванович Машков/Il'ya Ivanovich Mashkov
(1881―1944)
ロシアの画家。モスクワの絵画・彫刻・建築学校においてコロービンやセローフに学び、初めは「ダイヤのジャック」派に加わったが、のち「美術世界」派に移った。19世紀末から20世紀初頭にかけてセザンヌの影響を強く受けた。一連の静物画にそれは顕著に現れている。革命後はいわゆる当時のソ連的なモチーフを描かなかったこともあって、画壇の主流から外れたが、自分のアトリエや美術学校で後進の指導にあたった。しかし、社会主義リアリズム一辺倒の不毛だった旧ソ連美術界にあって、じみながらも自己の美的世界を探究した数少ない画家として、スターリン批判後の雪どけ以来、大きく再評価されつつあった。主要作『皿に盛られた果物』(1910)、『椿(つばき)』(1913)、『パイナップルとバナナ』(1936)はいずれもモスクワのトレチャコフ美術館にある。
[木村 浩]