日本大百科全書(ニッポニカ) 「マスハドフ」の意味・わかりやすい解説
マスハドフ
ますはどふ
Аслан Масхадов/Aslan Mashadov
(1951―2005)
ロシア連邦を構成するチェチェン共和国の軍人・政治家。旧ソ連時代、チェチェン人の両親が強制移住させられたカザフスタンの出身。チェチェン人。レニングラード砲術アカデミー卒。1992年にロシア軍大佐を退役後、故国に戻って独立闘争に参加。当時のドゥダエフ大統領の下で、参謀総長として軍事作戦を立案した。生粋(きっすい)の軍人であるが、政治家としては徹底した現実主義者の顔をもっていた。1994年12月のロシア軍のチェチェン侵攻以来、一貫してロシアとの交渉責任者を務めた。1996年8月、ロシア全権代表のレベジ安全保障会議書記と「独立問題の5年間棚上げ」で、停戦の合意をしたときは、身内の強硬派から突き上げをくらった。1997年1月の大統領選挙で当選。同年5月にエリツィン、マスハドフ両大統領の間で、ロシア・チェチェン和平条約の調印が行われた。しかし、この和平合意が守られていないとして非難の応酬が続き、1999年9月、隣接するダゲスタン共和国の民族紛争をきっかけに、ロシア軍が首都グローズヌイを攻撃した。2002年1月、ロシアとの戦争状態のうちに任期満了。2005年3月ロシア連邦軍などとの戦闘によりチェチェン北部のトルストイユルトで死亡。
[白井久也]