本来は,戦争中,現地の指揮官相互の合意に基づいて,局地的かつ短期的に戦闘を停止することをいう。休戦に比べて空間的にも時間的にも限定された戦闘停止である。この意味での停戦は,戦死者・傷病者の収容,捕虜の交換,死亡者の埋葬・水葬等の目的で,また,降伏や休戦の前段階として,その交渉のために行われる。軍隊の各級指揮官は,その指揮する部隊に関して停戦を合意する権限を有する。
このような停戦と異なり,最近では,休戦に等しい停戦の例が見られる。これは,戦争の違法化(〈戦争〉の項参照)に伴い,戦争状態が公然と宣言される例がきわめてまれとなった結果,停戦によって武力紛争の全面的中止や事実上の終結が取り決められることが多くなったためである。カシミール紛争の際の1949年のインド・パキスタンの停戦合意,第1次インドシナ戦争を事実上終結させた54年のジュネーブ協定による,ベトナム・カンボジアにおける戦闘の停止,ベトナム戦争を事実上終結させた73年のパリ和平協定による米軍の行動停止および無期限かつ完全な戦闘停止がこの例である。また,国際連合が介入して停戦を呼びかけ,当事者がこれを受諾する場合も多くなっている。1956年のスエズ動乱の際の国連総会決議,73年の第4次中東戦争の際の安全保障理事会決議がその例である。この際,停戦監視国が国連の手で派遣されることが多い。
執筆者:田中 忠
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