マートリチェータ(読み)まーとりちぇーた(その他表記)Mātceta

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マートリチェータ」の意味・わかりやすい解説

マートリチェータ
まーとりちぇーた
Mātceta

生没年不詳。2世紀末~3世紀、古代インド仏教詩人。もとは大自在天(シバ神)を信じていたが、ナーランダ寺で中観(ちゅうがん)派の仏教に改宗したという。多くの著作が帰せられているが、サンスクリット原文が現存するものは、短い讃頌(さんじゅ)『アナパラーダ・ストートラ』の断片のほか、ともに仏徳・仏法の賛嘆に終始し、讃頌文学の模範として彼の名声を高め、愛誦(あいしょう)された『シャタ・パンチャーシャトカ・ストートラ』(『一百五十讃』)と『チャトゥフシャタカ・ストートラ』(『四百讃』)とである。

[前田式子 2016年12月12日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マートリチェータ」の意味・わかりやすい解説

マートリチェータ
Mātṛceta

2世紀後半~3世紀頃のインドの仏教詩人。摩咥里制たと音写仏陀の徳を賛美した詩集,『一百五十讃』 Śatapañcāśataka-stotraなどの著者として知られるが伝記は不明。

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世界大百科事典(旧版)内のマートリチェータの言及

【仏教文学】より

…《サウンダラナンダ》《シャーリプトラ・プラカラナ》《大荘厳論経》なども馬鳴の巧みな文学的修辞によって書かれており,インド古典文学の先駆的意義をもつ文学作品として重要である。讃仏の例としては,馬鳴と同時代のマートリチェータが《シャタパンチャーシャトカ・ストートラ(百五十讃)》《バルナールハバルナ・ストートラ(四百讃)》を残し,インドから中央アジアにわたって強い影響を及ぼした。比喩文学(仏典では譬喩の字を用いる)は,たとえ,実例,過去の物語などを例にとって仏の教えを説くもので,仏弟子や信者たちの過去および現在の美談を扱った《アバダーナ・シャタカ(撰集百縁経)》《ディビヤ・アバダーナ》など一群のアバダーナ(比喩)文献が紀元後数世紀の間に生み出されている。…

※「マートリチェータ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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