改訂新版 世界大百科事典 「ミズジャコウネコ」の意味・わかりやすい解説
ミズジャコウネコ (水麝香猫)
water civet
otter civet
Cynogale bennettii
キノガーレともいう。水生で,カワウソあるいはラッコに似た体型をもつ食肉目ジャコウネコ科の哺乳類。ベトナム北部からマレー半島,スマトラ,ボルネオに分布。体長57~68cm,尾長13~21cm,体重3~5kg。体つきはがんじょうで,四肢が太く尾は短い。頭はカワウソに似て扁平で,鼻の孔には水中で閉じる弁があり,耳が小さい。前足の指間には大きな水かきがある。体には柔らかい綿毛が密生する。体の背面は褐色または黒色と淡黄色の霜降り状で,側面と下面は褐色。上下の口唇,目の上方,後方および頰に白色部がある。
川や沼の近くにすみ水中生活に適するが,イヌなどに追われると木にも巧みに登る。遊泳に尾は用いず,水かきの発達もカワウソほどではないため,泳ぎはのろく,水中での急反転もうまくないといわれる。水中ではすばやく泳ぐ獲物は捕獲できず,じっとしているエビ,魚,貝をとらえ,陸上では鳥や小型哺乳類,果実などを食べる。繁殖習性は不明で,ボルネオで5月に採集された雌が2胎と3胎をもっていた記録がある。飼育下で5年間生存している。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報