マレー半島(読み)まれーはんとう(英語表記)Malay Peninsula

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マレー半島」の意味・わかりやすい解説

マレー半島
まれーはんとう
Malay Peninsula

インドシナ半島からさらに南に細長く延びた半島。通常クラ地峡以南の範囲をいう。長さ1100キロメートル、面積18万平方キロメートル。アンダマン海と南シナ海を分ける位置にあり、北部はタイ、南部マレーシアに属し、最南端にはジョホール海峡を隔ててシンガポール島がある。古い地質からなる造陸地域で、中央部を侵食から取り残された数列のバンジャラン山脈南北に走っている。高峰は少なく、タハン山(2189メートル)、コルブ山(2182メートル)、チャマー山(2170メートル)などが高いほうである。また、山地では所々で石灰岩に花崗(かこう)岩が貫入してできた急崖(きゅうがい)がみられ、この半島の自然景観の特色の一つとなっている。平野は構造平野、侵食平野の部分がかなり広く、河川は短小ではあるが水量の豊富なペラク川、ケランタン川、パハン川などが流れている。海岸は、西岸は泥床が多くマングローブが繁茂しているが、東岸は砂州が発達している。気候は、主要部は熱帯雨林気候で、気温の月変化が少なく、降水量の月較差も比較的少ない。しかし北に行くにしたがって降水量の季節変動は大きくなり、熱帯モンスーン気候となる。たとえば南部のクアラ・ルンプールでは、月降水量は最少の7月が130ミリメートル、最多の11月が279ミリメートルである。これに対して北部のプーケット島では、雨は4月~11月に集中し、最少の2月は36ミリメートルであるが、最多の9月は320ミリメートルとその差は大きくなる。年降水量は山脈にかなりの影響を受け、マラッカ海峡、ボルネオ海沿岸では4000ミリメートルを超えるが、中央部山地では約2500ミリメートルと減少する。

 この半島は古くから東西交通の要地にあたり、また近代に入り錫(すず)鉱やゴム園の開発で急激に発達したため、住民構成は複雑である。主要民族のマレー人のほか、中国人、ヨーロッパ人、インド人などの外来人が多く住む。また山地にはセマンセノイなどの先住民族も居住するが、人口は少ない。

[大矢雅彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マレー半島」の意味・わかりやすい解説

マレー半島
マレーはんとう
Malay Peninsula

インド洋と南シナ海を分けるインドシナ半島からさらに南方に突出した狭長な半島。北東部と中部をタイが,北西部をミャンマーが,南部をマレーシアが占める。基部のバンコク湾奥から南端まで全長約 1500km。最大幅は約 300km,最狭部はクラ地峡で約 50km。インドシナ山脈の支脈が南北に縦走する。最高峰はマレーシアのタハン山 (2187m) 。中央部は一般に熱帯雨林の未耕作地だが,東西の沖積平野のうち東海岸は主として稲作に,西海岸はゴムのプランテーションと稲作に利用されている。人口密度は,マレーシアではマラッカ海峡沿いの西海岸が高く,タイではタイ湾にのぞむ東海岸が稠密である。熱帯雨林気候で,11月~3月は北東季節風,4~10月は南西季節風が吹く。スズ,天然ゴムの世界最大の産地である。気候や人種の共通性により,クラ地峡以南はマレー諸島に含められることが多い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報