日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミュラージュ」の意味・わかりやすい解説
ミュラージュ
みゅらーじゅ
Mi'rāj
預言者ムハンマド(マホメット)が天に昇って神に会ったという奇跡。620年ラジャブ月(第7月)27日の夜、ムハンマドがメッカからエルサレムに夜の旅(イスラー)をしたあと、そこから天国へ旅をし、神に会ったといわれ、この夜をイスラム世界では聖なる夜として祝う。彼の肉体が旅をしたのか、それとも魂だけなのかについて古来から議論されたが、現在では一般に前者が信じられている。この奇跡は、後代さまざまなディテールを伴った伝説に発展し、そのなかの一つが中世ラテン語に訳され、ダンテの『神曲』に影響を与えたという説もある。スーフィズム(イスラム神秘主義)においては、ビスターミー(?―874)以降、ミュラージュはスーフィーの神への旅の原形と考えられ、象徴的解釈がなされたり、多くの詩に歌われた。
[竹下政孝]