日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムラサキハナギンチャク」の意味・わかりやすい解説
ムラサキハナギンチャク
むらさきはなぎんちゃく / 紫花巾着
[学] Cerianthus filiformis
腔腸(こうちょう)動物門花虫綱六放サンゴ亜綱ハナギンチャク目ハナギンチャク科に属する海産動物。日本特産種。房総半島以南の日本各地に産する。虫体は長細く、よく伸びたときには全長20センチメートルになる。上部は口盤となり、口盤中央に口が開き、口盤外縁に縁触手、口縁に口触手がある。縁触手、口触手はともに色彩変異に富み、暗紫色、藍(あい)色、黄土色、緑色のものなどがある。体壁は小豆(あずき)色で滑らかであり、表面は腺(せん)細胞に富み、そこから粘液を分泌し、粘液を層状に重ねた管中に生活する。下端はやや細くなり、先端に小孔をもつ。第2原始隔膜が最長となり個虫下端付近にまで達するが、ほかの隔膜は上方にしかない。浅海の砂泥底に粘液でつくった管を埋めてその中にすむ。管の表面にはホウキムシが共生。近縁種のヒメハナギンチャクPachycerianthus magnusは、第1後隔膜が最長となり、触手は暗紫色または橙(だいだい)色で、各縁触手の背腹に各1本の白縦線を備える。
[内田紘臣]