ホウキムシ

改訂新版 世界大百科事典 「ホウキムシ」の意味・わかりやすい解説

ホウキムシ (箒虫)

箒虫動物門Phoronidaに属する無脊椎動物の総称,またはそのうちの1種を指す。ホウキムシPhoronis australisは日本各地,オーストラリアに分布し,体表から分泌した粘液でつくった袋に入って浅海の砂泥中にすむか,ムラサキハナギンチャクの棲管(せいかん)の中に共生する。体長9cm,体幅4mmに達し,体は触手冠と円筒状の胴部とからなる。触手冠は濃い紫色で多くの触手が二重に配列し,触手冠を水中に広げ,各触手の繊毛運動で水流を起こして植物プランクトンを円錐状突起の上に開いている口へ運ぶ。胴部は肉色で付属物はない。消化管は口から長い食道を経て胃囊(いのう)になるが,腸は再び上方に向かって口の背側に開いている肛門へ連なっている。雌雄同体であるが,雄性先熟である。受精は体外で行われ,アクチノトロカactinotrocha幼生になってしばらく浮遊生活したのち変態する。日本には他にヒメホウキムシP.hippocrepia(=P.ijimai)が三崎厚岸から得られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウキムシ」の意味・わかりやすい解説

ホウキムシ
ほうきむし / 箒虫
phoronids

触手動物門ホウキムシ綱の海産小動物の総称、またはそのなかの1種。浅海の砂の中や岩の上に棲管(せいかん)とよばれる管を分泌してその中にすむ小形の長虫状動物。世界中で2属10種ほど、日本からは1属2種が知られている。先端に触手の束を備えた細長い円筒形のからだを箒(ほうき)に見立ててこの名がついている。触手は数十から数百本を数え、触手冠を形成する。触手冠は、触手数の少ない種では馬蹄(ばてい)形をしているが、多くなると複雑に巻いて左右二つの螺旋(らせん)環をつくる。消化管はU字形で、肛門(こうもん)は触手冠の外側に開口する。血管系は閉鎖型。赤血球をもつ。排出器と生殖輸管を兼ねた1対の腎管(じんかん)がある。種によって雌雄異体または同体。受精卵はアクチノトロカとよばれる美しい形の幼生へと発達する。この幼生はしばらく海中を遊泳したのち、着底・変態して成体となる。

 ホウキムシPhoronis australisは、体長20センチメートルにもなる大形種で、ムラサキハナギンチャクの棲管の中に穴を掘ってすむ。日本からはもう1種ヒメホウキムシPh. ijimaiが知られている。この種は海底の岩の上などに大群をなして付着することが多く、体長は3~10センチメートル。なお、分類学上、この動物群を門の段階に昇格させて扱う考え方もある。

[馬渡峻輔]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホウキムシ」の意味・わかりやすい解説

ホウキムシ
Phoronis australis

触手動物門ホウキムシ綱ホウキムシ目ホウキムシ科。体長 9cm。体は肌色で細長く,体表から粘液を分泌してつくった管に入り,前端に触手冠をもつ。触手および口上突起は濃紫褐色で,触手の長さは1~1.5cmほどである。内湾の浅い砂泥底に群生し,ときにハナギンチャクの棲管に共生する。千葉県以南 (太平洋側) および能登半島以南 (日本海側) に分布する。

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百科事典マイペディア 「ホウキムシ」の意味・わかりやすい解説

ホウキムシ

触手動物ホウキムシ類の総称。体は5〜10cmくらいの細長い円筒状で,体表から分泌した粘液で管を作ってその中にすみ,海底の砂泥中に埋まる。単独のものと,からみ合って群生しているものがあり,口の周囲にある2列の触手環で餌をとる。雌雄同体で,浮遊性のアクチノトロカ幼生を経て成体になる。世界に10種ほど。日本にはホウキムシとヒメホウキムシがいる。

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