日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウキムシ」の意味・わかりやすい解説
ホウキムシ
ほうきむし / 箒虫
phoronids
触手動物門ホウキムシ綱の海産小動物の総称、またはそのなかの1種。浅海の砂の中や岩の上に棲管(せいかん)とよばれる管を分泌してその中にすむ小形の長虫状動物。世界中で2属10種ほど、日本からは1属2種が知られている。先端に触手の束を備えた細長い円筒形のからだを箒(ほうき)に見立ててこの名がついている。触手は数十から数百本を数え、触手冠を形成する。触手冠は、触手数の少ない種では馬蹄(ばてい)形をしているが、多くなると複雑に巻いて左右二つの螺旋(らせん)環をつくる。消化管はU字形で、肛門(こうもん)は触手冠の外側に開口する。血管系は閉鎖型。赤血球をもつ。排出器と生殖輸管を兼ねた1対の腎管(じんかん)がある。種によって雌雄異体または同体。受精卵はアクチノトロカとよばれる美しい形の幼生へと発達する。この幼生はしばらく海中を遊泳したのち、着底・変態して成体となる。
ホウキムシPhoronis australisは、体長20センチメートルにもなる大形種で、ムラサキハナギンチャクの棲管の中に穴を掘ってすむ。日本からはもう1種ヒメホウキムシPh. ijimaiが知られている。この種は海底の岩の上などに大群をなして付着することが多く、体長は3~10センチメートル。なお、分類学上、この動物群を門の段階に昇格させて扱う考え方もある。
[馬渡峻輔]